2007年 01月 09日
ならば監獄の本丸突入 |
一週間に及ぶ南の島生活で身に付けたこと。
超早起き。
6時には目が覚めます。
日ごろは規則正しく7時にしか目が覚めないわたしが、ですよ。
しかも日中であれ気が向いたときにいつでも眠れるわけだから、目が覚めた後、「二度寝したい」なんて気がまったく起こらない。酒飲まないかぎりは、だけど(笑)
そんなわけで、昨日本当に何もしなかった分、きょうは朝もはよから気合いを入れてがんばりました。ツアー客も顔負けの過密日程。観光しまくりです。
すでに数日前の日記でも書いたんだけど、単なるリゾート地への中継地というだけでないのがここポートブレアのちょっとすごいところ。
絶海の孤島にふさわしい珍しい動植物生態
今も一般との交流を閉ざしている固有の住民たち
英日の占領に前後した独立の志士たちの苦難の歴史
そのエッセンスおよびさわりの部分を体験できる施設が町周辺にはちりばめられておりまして、まさにトランプのジョーカー並みにオールマイティーな観光資産を持ってるってことなのね。
まずはSamudrika Marine Museum。
インド海軍によるインド人民のための海洋博物館。ガイド本の情報にあわせて午前8時半の開館ぴったりに到着する律儀なわたしに立ちはだかるゲート。「開館9時」と愛想も糞もない表示板があるのみ。
ただし、捨てる神あれば拾う神もあるのがアンダマン。
時間つぶしの散歩のはずが数分後、目に入ってきたのは「MINI ZOO」という控えめな門。
おお、確かにそんなもんがあるとガイドにもあったっけ
入場料2ルピーがまた控えめでよろしい。これだったら何を見せられても、イヤ、例え何も見せられなくても、時間をつぶせてもらえるだけで不満は言えません。
なにせ、単なる町歩きであってもこの辺りにはどうも学校が多いようで、通学途中の若者たちだらけ。わたしよせる好奇の目が気になって仕方ない。こっちが動物園の動物のように見られてる気分になるんだから、動物園は格好のシェルターになるってわけ。
その程度のモチベーションで入場した動物園なんだけど、十分な驚きを与えていただきました。
Saltwater Crocodile(直訳:海水ワニ)
わたくし、ワニは淡水の生きもんなんだ、と勝手なイメージがあったんだけど、どうやらアンダマンの海にはこやつらがいるらしいのであります。
体長4〜5、胴回り1mもありそうな恐竜タイプです。
もう海水浴をする予定のないわたし。少し早くおっしゃってほしかったよ、そんなこと。
ちなみにこの動物園、毎朝8時半から30分は餌付けの時間帯で、飼育員がカニクイザルやワシなどの猛禽類にえさをやる姿を観察できるのもウリの一つらしい。でも海水ワニだけは、お食事は「半月に一度」の表示。次回は1月15日。半月に一度の食事。
いった何を食わせるんじゃい!?
わざわざ精肉したようなものを与えるとは思えず。ニワトリ一羽じゃ少なすぎっしょ。ヤギとかを生きたまま放り込んだりするとか。わたしの観察時間中微動だにしなかったその巨体がどれくらい攻めの姿勢をとるのか、がっつき具合たるや凄まじいんだろうねぇ。
予定時間をだいぶオーバーして再び海洋博物館へ。
わたしはその名の通り、基本山系の男だと思っておりますので、あまり海の生態には感心ございません。ただし「族」は別。
アンダマンおよびニコバル諸島に暮らす絶滅寸前の少数民族たち
旅行者だけでなく一般インド人との接触も禁止されている彼ら彼女らを現地に訪ねるなどもってのほか、その姿が拝めるのはもうこんな博物館くらいしかないわけね。
だからここにも館内に展示されているという先住民族たちの写真たった数枚のために訪れたようなもの。
ここまで色んな制限がかかってしまうと、わたしにとってその存在は神格化された戦前の天皇みたいなもので、まずはそのプリミティブな姿に三拝九拝。
当然上半身ハダカ。泥や天然の顔料を使ったメイクも独特。
こんな暮らしを続けている人たちがこっから100キロ圏内のところにいるんだよねぇ
なんて思うだけでこみ上げてくるものがあります(ない?)。
どちらかというとここよりは北方系の少数民族には若干ふれあった経験のあるわたしですが、ここまでむき出しな人たちとは向き合ったことなし。
今も基本狩猟採集を続けているという彼ら。世界最大の民主主義国家でたぶん選挙にも政治にもまったく関心を持たないであろう彼ら。
インドの聖地には「死を待つ人々の家」という施設があるんだけど、もう数十人しか残っておらず、更に現代文明を受け入れるつもりもない彼らの暮らす美しい島は「絶滅を待つ種族の島」になってしまうのか。
意志を持った人間なのだからパンダやトラなどの動物に対してのような繁殖プログラムを行うわけにもいかないし…
人の暮らすところ、どこにだって難しい問題は転がっているわけです。
気を取り直して次は戦争もの。映画じゃないよ。
ポートブレア沖合2キロに浮かぶRoss Island(ロス島)にショートクルーズ。
島自体も周囲3キロほどのサイズでイギリス統治時代に官庁がおかれたその「名残」を楽しむのがこちらのアトラクション。
「名残」というのも、1941年に地震が島を襲い、地元紙に「東洋のパリ」とたたえられた(らしい)建物群は崩壊。さらに日本軍の侵攻に備えて本部もポートブレアに移されたこともあり、人の手から離れた島はどんどんジャングル化しちゃった、という展開。
アンコールワットでは寺院や仏像が木に飲み込まれていったように、こちらではれんが造りの建物の残骸が樹木に覆われていったさまが「何とも人の世のはかなさ」を誘うではないか、とインド人が思うかどうかは知らず。
少なくともわたしは「兵ものどもが夢のあと」を感じました。実際に日本軍が使った塹壕、掩蔽壕跡なんかも残ってたりするわけだから、まあ嫌が応にもってやつです。
再び本島に戻れば、今度は監獄もの。ロックでも大脱走でもないよ。
ここポートブレアがインド独立の志士(フリーダムファイター)たちを島流した土地だったってのも以前紹介しました。
そうした人たちを収監したのが高台に残る「Cellular Jail National Museum」。
敷地内には絞首台の建物や牢獄の一部、監視塔などが残っていて、さらに展示スペースには当時の拷問の様子の再現ジオラマや当時の写真、「Andaman Shinbun」なるものの写しなども展示してあって、さすがに足取り軽くはなれず。
ポーランドでアウシュビッツを歩いたときや南京の大虐殺博物館を訪ねたときと同じ感覚、揺るぎない過去の事実が、人間の後ろめたい部分の象徴として今もまだ存在していること、南国の明るい太陽でも照らし出せないようなうす暗いヤミの部分をここで再び感じたのでした。
さてさて。
何はともあれわたしの一日の充実ぶりが分かっていただけたであろうというもの。こんな一日、最後の食事はエビカレーで締めました。
結局のところここアンダマンではトリ、ヤギ、ブタのタグヒ、いっさい口にせず。全ては海の幸にて我が胃袋は満たされたのでした。安くてうまいアンダマンの魚貝たちよ、ほんとうにありがとう。
うおぉ〜、無性にアフガニチキン(Alkauser@デリー限定)が食いたくなってきたぁ〜〜
by itoyamamakoto
| 2007-01-09 14:44
| またまた旅に出ました