2005年 06月 30日
健康診断まさかの秒殺 |
よりによって6月も終わろうとしています。
かろうじて「学生」やっているわたしですが、刻一刻と「ぷー」への道まっしぐら。授業は7月7日で終了。さらにどうあがいたところで、学生証の有効期限(同28日)を過ぎればただの人というわけです。
おい、どうした?
9月からチベットで遊牧(留学)するんじゃなかったのか?
そんなブーイングが聞こえてきそうです。
だけど、だけど、待てど暮らせど、やっぱり来ません。
西蔵大学からの留学生採用通知書!
現在、ありとあらゆる手を使って対策を講じてるところなのですが、一部情報によれば、「送付は8月中旬になる」とのとんでもない話もあり、落ち着かない日々は当分続きそう…。
泰然自若、太極を極める心をして指をくわえてても良いのですが、くわえすぎてふやけてしまうと日常生活も支障が出てくることだし、突然ですが健康診断に行ってきました。
そうか、齢30も過ぎれば生活習慣病が気になるお年頃。
健康診断で日頃の悪習を見直そうというのですね。
そう直感で思ったあなた。
罰として火鍋を付けだれカキ油なし、辛椒花椒追加盛りで食べてください。
採用通知書さえ届けば即留学ビザが取得できるよう、申請に必要な健康診断書を事前にゲットしておこうという、おいしい牛丼を食べるために○○での朝昼の食事を抜くくらい綿密に計算された健康診断なのです。
さて、この「健康診断」ですが、中国にやってくる留学生(1年以上滞在)にとっては「広辞苑」に記された説明以上の意味があって、「中国側が認める国立かそれに準じる医療機関の検査でないと通用しない」「エイズや梅毒検査も必須」「心電図とX写真をわざわざ留学先の大学まで持参」など、細かい規定がわんさか。
さらには病院での身体検査は保険がきかないため、検査費は2万円以上かかるところがほとんど。要するに「鬼門」なんです。
思い起こせば昨年6月下旬。決してさぼりではなく仕事の合間をうまく見つけて、四川大学から送られてきた専用の診断用紙を片手に、国立病院機構熊本医療センターの門をたたいたものです。結果が出るまで約1週間。費用は2万8千円ほどだったような。
ですから、今回、帰国後にまたどこかの病院で同様の検査を受けるとするなら、約3万円と約1週間が必要になります。まあ100歩、いや1000歩譲って金のことはどーでもいいとしましょう。が、さらにビザ手続きに1週間近い時間が必要なことを考えると、時は金なり。無駄に時間を使うことはすなわち、わたしの壮大なサマートリップ(旅)にまで影響が出てしまうということ。
そんなことを考え始めていた6月のある日。
北京でも健康診断ができるらしい。
検査項目もビザ取得の要件を満たしているらしい。
しかも「お求めやすい価格」らしい。
そんな美味しい情報を地獄耳がキャッチ。
中国で受ける健康診断なら中国側も認めざるを得まい。
ただ一つ条件があって検査は平日午前中(午前8時ー同10時半)のみ。授業出席を旅行の次に大切にするわたしですから、「終業式まで検査はお預け」、やはり指をくわえたまま時が過ぎていたのでした。
ところが、果報は寝て待て。
本日の口語課はテスト前の質問コーナー。参加は自由。なんという朗報。いやあ残念だ。質問があれば是が非でも参加したんだけど、何せまだ復習ゼロ。当然聞くべき所もありゃしない。で、行ってきたわけです。
目指すは「北京市国際旅行衛生保健中心」。
場所は地壇公園の北側。地下鉄環状線の輪の北に位置する安定門駅が最寄りで、ここから安定門外街道を北に徒歩約10分。UFOが脱皮して骨組みだけになったような巨大歩道橋がかかる巨大交差点を右折してさらに徒歩5分。右側にあります4階建ての新しい建物にたどり着けば、まち歩きは終了。
出国予定の中国人もここで検査を受けるらしく、受付はそれこそ黒山。かつて北京の病院で体験した診断手続きの複雑さ、処理する係の効率の悪さが脳裏によみがえるが、外国人は窓口が別。4階に直行すればそこは全くの別世界。「○○クリニック」と名付けてもよさそうなほど静かで落ち着いた雰囲気。
窓口の女性も四六時中眉をつり上げたりしてないし、新参者を見つければ向こうから「体検(ti2jian3)?」と声をかけ、問診を兼ねた登録用紙を渡してくれる。
記入を終え、顔写真一枚を貼り付けて提出する。女性はパソコンに必要事項を入力、さらに据え付けデジカメにてわたしの顔を撮影して最初の手続きは終了。次はとなりの台で検査代を支払う。わたしの前にいた会社員風のオヤジが約670元を払うのを見て、思わず財布の中身を確認してしまったが、「学生価格」なのか、わたしはこみこみで「346元」ですんだ。五千円弱。こりゃ、もう笑いが止まらん。
レシートが渡され、写真付きの登録用紙が戻される。
「どの扉から検査を始めても結構です」
天井から見れば正方形型、ちょうど小ホールのようなこの部屋には、廊下へと続く扉のほか、正方形の二つの辺に3つずつ扉があり、奥の小部屋につながっているようだ。てことは、このスペースで検査は終了することになるのだろう。
むくむく、むくむくむく。
おっ、これは不安がもたげる音ではないか。
そういえば昨年の検査の時は、四川大学から送られてきた専用紙に記入をしてもらわなかったか?手元にある登録用紙とは全くスタイルが違うし、もうこの用紙には結果を書き込む空欄もないではないか。それに検査項目もそんなに少なかったっけ?
と思いつつ、「たのもー」。一つめの扉をたたく。
6畳ほどの小部屋。中には三人の白衣(女2男1)。
血液検査の部屋らしい。
うん。これは必要だ。たかが血液検査とバカにしたおかげで、わたしはこれまでいろいろ嫌な思い出があるが、もう過去のこと。ただ、血液からって色んな情報が分かるから、試験管に何本も取られるんだよなぁ。おぅ、うまいじゃないのおばちゃん。針を刺すとき全く痛くなかったよ。でも、この針を刺したままで試験管を変えるときって、血管の中に空気が入らないかいつも気になっちゃうんだよなあ。ああもう一本目たまっちゃったよ。で注射針を抜き取りました。えっ、で終わりなの?まだ30㏄くらいだよ。これで必要十分なら、日本の検査はなんだったのよ。
「たのモー」。
2つめの扉は心電図の部屋。
そうだよ。これは必須です。足や手、胸に10カ所くらいぬるぬるのクリーム塗られて、大型洗濯挟みみたいなのや吸盤を貼り付けられたあと、標本みたいに2、3分くらいじっとしてるんだよなあ。服を脱ぎましょうか?あっ、そう。その必要はない、と。左足のくるぶしと左手首に洗濯挟み、あと胸に一カ所吸盤をつけただけ。吸盤が足りないのかなあ、いつ始まるのかなあ。えっ、終わりですか。横になって10秒もたってませんよ。おばちゃんがそういうのなら終わりなのでしょう。検査結果をお土産に持たされましたが、これがA4用紙くらいの大きさ。確か熊本の時は、バラバラと開けば1メートル近い虎の巻みたいになっていたような…。
「たのんますよぉ」。
3つめの扉は「問診」の部屋ときている。
中には50代のオヤジ一人。まずは血圧検査。機械式ではなく御自ら手動ポンプ式。計測後パソコンに向かいカタカタと入力。どうやら情報はコンピューター内で管理しているようだ。
続いて聴診器を取り出す。これはやはり上半身裸でしょう。えーっ、ちがうの?服の上から?これで分かるの?先生まさか聴診器使いの達人?なかなか真剣なお顔、これは信頼できそう。
っておい!
胸ポケットのiPod、再生中のままじゃん!
さっき受付で声かけられたとき、あわててイヤホンをポッケに入れてそのまま。
おっチャンの顔、かなり険しいな。そんなポケットのすぐ横に聴診器あてちゃって。やっぱり音楽にじゃまされて何も聞こえないのかな?聞いてた音楽、多分ロックだったような?でもプライドが許さないから何とか心臓の音を聞き取ろうと、戦っているのかな?こっちから言うべきなのかな?あっ、終わったよ。
「視力はいくつ?」
「はいメガネで1,0です」(パソコンにカタカタと入力)
「特に持病は?」
「ありません」(…カタカタ)
「身長は?」
「180です」(…カタカタ)
申告通り、そのまま入力しちゃうんだ。
わたし信頼されてるのかな?
「体重は」
「はい75キロです」(…カタ。)
「靴を脱いで後ろの体重計に乗りなさい(怒)」
おい!(おもわずツっ込み入れそうになるわたし)
緊迫する時間。
別にサバ読んだつもりはないが、中国に来て以来体重を量っていないのも事実。みんなに痩せた痩せたっていわれるんで、軽々しく申告してしまったが、一年前は80を超していたのもまた事実。おっチャンの意図をいまいちくみ取れないながらも台の上に乗るわたし。結果は「76」。これは敗北を意味するのか?奴の顔を見れば、向こうもいまいち納得できない様子。
「1階でX線検査をすれば終わりだから」
それが最後の言葉だった。
そうですか、えっ終わりですか?
まだ始まったばかりのような気がするのですが…。
1階のレントゲン室も中国人とは別室。極めてスムーズ。被写体がいいからいっぱつOK。
1階受付にて、登録用紙に顔写真2枚を添えて提出すれば、「7月4日(月)午後以降に受け取り」との紙を渡される。土日を挟むから実質3営業日で発行ということになる。
やればできるではないか中国人!一度や二度声を荒げるくらいぐだぐだな展開を覚悟していったのだが、これでちゃんとした用紙にプリントアウトしてくれればほんとに言うことなし。
まさか秒殺を食らうとはなぁ。
この建物に入ってから出るまで、およそ15分間(900秒)の出来事。かなりいい加減だった気がしないでもないけど、妙に感心してしまうわたしでした。
by itoyamamakoto
| 2005-06-30 02:00
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