2005年 09月 21日
無人区は無人区として |
藏羚羊、保護の成果?それとも減少?
可可西里地区の三大危険と四つの謎に挑む
解密中国科学隊
【9月21日=華西都市報】
科学者や新聞記者、そのサポート隊など総勢約50人からなる中国科学院可可西里科学考察隊が20日、人類として初めて可可西里無人区の中心部を1カ月半かけて縦断、現地調査を行うという壮挙を成し遂げるため、チベット自治区の省都ラサを出発した。
◎A:可可西里挺進「三大困難と危険」
艱険1 行路困難
科学隊の丁林隊長によれば、交通問題こそ一行が直面する一番の問題だという。可可西里地区の核心部は古来から続く荒野で、通行できる路などは当然のようになし。アウトドア用の四輪駆動車だけが、河や湖、山脈やゴビ(荒野)が複雑に続く地域を進むことができる。隊員たちは荒れた道を進み、川を渡る。当然、泥道にはまることや故障などのトラブルも避けられない。
艱険2 気候多変
誰も天気は予測できない。丁林隊長曰く「中心地域の気候は局地ごとに変わりやすく、調査をより難しくします。これまで可可西里地区では現地に入っての気象観測は行われたことがなく、このため天候予測はより困難に。晴天時には摂氏20度に達していたとしても、突然吹雪が始まり、それによって気温は突如零下10度近くまで急降下することもあり得るのです。こうした天気の不安定性は、我々調査隊にとっては大きな脅威となります」
艱険3 高原疾病
「核心地帯の平均高度は標高5000メートル前後で空気中の酸素濃度は平地の約二分の一。高山地帯の薄い空気によって引き起こされる高山病も大きな危険の一つ」。丁林隊長は言う。「肺水腫や脳水腫、急性ショックなど高山病は発症が急で生命への危険も大きい。すべての隊員の体力や精神状態を細かく把握する必要がある」。このほか、食料や燃料の不足、調査道具、通信機器の故障なども調査隊の頭を悩ます種だという。
◎B:可可西里挺進「四大謎」
謎その1 青藏高原は「成長している」のか?
「青藏高原は上昇を続けているのか、それとも下降を始めたのか?」。科学者たちの間はいまだにこのような論争が続いている。見方の一つとして、青藏高原ははるか昔に隆起をやめ、現在は止まったばかりか、下降を始めたというものがある。また別に、青藏高原は現在もかなりの速度で隆起しているという観点もある。
「当然ながらこの二つの観点はどちらも現段階において総合的な証明はなされてません。このため、誰の説が正しく誰の主張が間違っているとは言えないのです」。科学調査隊の隊長で中国科学院青藏高原研究所研究員の丁林さんは説明する。「可可西里地区では、山脈や氷河や湖、果ては動植物に至るまで研究を行い、そこから得た上昇か下降かを示す的確な証拠を通じて、変動の時間やその規模などが推定できるかもしれない」
謎その2 可可西里に石油は、金脈は?
エネルギー資源や鉱脈は国家経済発展の原動力であり、可可西里地区には一体どれほどの石油や金脈、銅脈が眠っているのか、これも今回の科学調査の焦点の一つとなっている。
「過去に可可西里の周辺部で行われた調査では、数カ所から地表や岩石の隙間からにじみ出たコールタールや石油が見つかっている。この地に大型油田が存在する可能性は極めて大きい」。丁林隊長は紹介した。曽ての調査による結論や衛星を使った遠隔調査による分析結果によれば、可可西里地区の地質構造は油脈を形成するに十分な要素を備えており、巨大油田を埋蔵している見込みが高いという。ただし今回1回限りの縦断調査では、大型油田を探し当てることはほぼ不可能であり、今後長い時間をかけての分析が必要とされる。
可可西里地区における豊富な金脈資源は既に20世紀の80年代、青海地区にゴールドラッシュを引き起こしている。
謎その3 藏羚羊はいったいどうなってるのか?
藏羚羊(チベタン・アンテロープ)、大自然の精霊であり、人々にとっては可可西里地区のイメージとも重なり合う。そんな藏羚羊はまさに「可可西里の誇り」。人々はすでにあの手この手を使ってこの希少動物の保護を行っているものの、そう遠くない過去にも大量捕獲、密猟のニュースが伝わってきたばかり。はたして藏羚羊の群れは増加しているのだろうか、それとも絶滅に瀕しているのか。
この問題について、記者は中国科学院西北高原生物研究所の研究員、蘇建平隊員に取材。彼によれば、現在のところも藏羚羊の密猟は後を絶たないものの、ただ数年前の大量密猟のような事案は減っており事態は好転しているという。ただ実際に調査を行う前の段階で楽観的な予測や仮説を立てることはできないという。
謎その4 可可西里の湖はどうしてできた?
調査隊は、大陸湖、氷河凍土、火山地震、鉱物資源、野生動植物、気候など多くの領域の専門家から組織され、可可西里を同地域内での局地的な「点」として、また青海地域における影響をふまえた「面」的な研究、さらには「世界的」な地球規模での視点から研究を展開する。近年、衛星写真によって可可西里地区には多くの新しい湖が発見されており、これら湖のできた原因は何なのか?水位が急激に上昇したり下降したりする湖もあるが、その理由は何なのか?雨による影響なのか、溶け出した氷河や凍土によって形成されたものなのか?この減少は当地の生態系によい影響をもたらすのかそれとのその逆なのか?
【評】
でました国威発揚型プロジェクト。
地球上の白地図エリアにコマを進めて既成事実を作っていくやり方は、中印国境紛争の中、いつの間にか「アクサイチン」をゲッチューしていた昔を思い出してしまいます。
さらには、かつて8000メートル級の山を筆頭に、チベット人たちに神聖視されていた俊嶺が次々と西洋の登山家たちに「征服」されていきましたが、それともオーバーラップしてしまうのはあわせて部外者の勝手な妄想と思ってもらって結構です。
今回の調査では大きく4つの「謎」の解明が目的とされていますが、立場が上の人になればなるほど、一番のどから手が出るほど「知りたい」のはやはりエネルギー源についてのはず。
果たして中国の国際的立場を根底から変えるような大発見があるのか?
そんな可能性のある場所なんて世界中を探してもそう残ってませんから。
もちろん世界のエネルギー市場のことを公平に考えたなら、エネルギー革命なんてまだ当分先のことでしょうから、巨大油田が見つかった方がいいに決まっていますけれど…。
けど、どうしても「荒らされる」イメージが先行してしまうわたし。
無人の荒野に文明の象徴のような石油プラントみたいなも建物ができてしまったら、藏羚羊(参考http://itoyama.seesaa.net/article/4470912.html)とのツーショットはアンバランスすぎます。マウンテンゴリラが天安門広場前で記念写真を撮るようなものです。例え悪すぎですが。
無人区は無人区だからいいわけで、例えば「一般人は足を踏み入れない」とか「日常生活は行われていない」みたいに色んな細かい条件の付いた「無人区」になってしまったら、その価値はなくなるわけです。
地球上のあらゆる地域が人跡未踏でなくなってしまった今、可可西里地区は非常に貴重なエリア。地球上にそのような地域が一つでも残ってる方がロマンをかき立てられるというもの。
映画の影響もあって「可可西里=自然保護」というイメージも強いだけに、とんでもない何かが見つかったとしても、流れが極端な方向に行きすぎないこと、中国人の良識に期待したいものです。
最後に。
今回の調査隊は、隊員50数人のうち化学部門の研究者が14人、同行記者が6人。11台の4輪アウトドア車と、4台の牽引車、2台の燃料車さらに通信用車両を従え、10月末まで調査を実施。その日程は40日に及び、ラサを出発後、途中双湖、格仁錯、可可西里湖、鯨魚湖などをへて青海省ゴルムドで到着です。走行距離は1万キロだそう。
記事の構成をみると、ほとんど丁林隊長の言葉をつないで作っています。あまりにどの段落も一緒なので、翻訳の段階でアクセントをつけようにも思うようにいきませんでした。
専用の通信車両も備え、記者を6人も派遣しているのですから、各記者が競うように面白い記事を書くのが理想。上司と面と向かう必要もないわけですから、日頃の鬱憤(もしあればですが)を晴らすように読者が食いつける原稿を出してもらいたいですね。★★★☆☆
by itoyamamakoto
| 2005-09-21 21:06
| これは面白ニュース!?