2005年 10月 28日
遅刻教師の言い訳とは |
ホンモノがやってきました。
金曜日。
午前8時からのチベット語基礎が終わり、チベット語口語が始まるまでの20分間の休み時間。いつものように馬鹿話を繰り広げる日本人連中。
「ごめん。おれ英語に目覚めるから」
「なに考えてるんすか。中国ですよ、ここ」
そこに割り込んできた第三者の日本語。
「日本人の方ですか」
(えっ)
「はい。そうですが…」
「あっ。やっと日本人に会えました」
女性。20代だけど四捨五入すれば多分30歳にはなりそうなほど。
「ここチベット語のクラスですよ。チベ語やるんですか」
「はい。ラサ語は分かるんですが…」
そうでなくても新鮮話に乏しいこのクラス。
とにかく、アフリカ・サバンナの真っ直中をひた走る列車に一人だけ乗り合わせた黄色人種のように、
「新同学登場か」
「韓国勢力(3人)に並ぶ第一勢力誕生か」
そんな期待に取り憑かれたわれわれ日本人2人の質問攻めにあう彼女。
○○大学(その世界in日本では超有名)でチベット学を専攻してました。ラサに留学してました。民族大に来る前は北京の藏学研究機関に在籍してました等々。
聞けば聞くだけ、彼女のモノホン度は高まるばかり。
われわれ興味本位野郎のニセモノ度も際だつばかり。
先週成都にやってきたばかりという彼女。
本業はこちらの大学の藏学院(チベット族が学ぶ)での研究ということ。
「カム語は初めで聞き慣れなくて…」
ということから、本日はちょっと体験授業ということも分かりました。
そういうことな喜んで授業を聞いてもらおうか
なんですが、気がつけばとっくに授業が始まってもよろしい頃。
なのに、やってこない人がいました。
口語の教師、目力(めぢから)の蔵族レンチンワンジャ。
→(http://itoyama.seesaa.net/article/8575436.html)
熱心さにかけては、「さすがチベ人」というくらいわたしもレンイエンも評価が高かった彼なのに、20数分過ぎようがなんの音沙汰もなし。
「やっぱ30分たって先生来なかったら休講になるんかな」
なんて冗談も本気になりそうなころ、じわ〜っと開かれる教室のドア。
そこから、ぬ〜っと現れるちょっと伏し目がちなチベット人。
顔を若干赤らめ、教室内を見渡す男。ばつの悪そうな表情。
そう。レンチンワンジャ。
今日は目力0。
申し訳なさそうに教卓まで歩みを進めると、
「ごめんなさい。寝坊しました」
(えっ。先生が寝坊っすか)
「昨日ガンゼ(先生の故郷。成都からバス2日)から友だちが来てね。2時まで飲んでました」
(えっ、2時から今まで寝てたの?)
「そいつのいびきがうるさくて。実は1、2時間目の藏語高級口語は完全に寝過ごしちゃったんだよね」
そう。ここはネバーランド成都。
この底なし沼ならぬ「ぬるま湯沼」に一歩でも足を踏み入れたなら、東方のうさぎ小屋国家からやってきた元働き蜂たちであろうが、西方の気高きスノーランドの住人たちであろうが、だれもが「ピーターパン症候群」に毒されてしまいます。
そういうことで一応授業が始められたんですが、20分もすれば中休みの時間。
授業を最後まで聞くことなく、モノホンは去っていきました。
「なかなか分かりやすい授業じゃないでしょうか」
(何よこんな授業。つきあってられないわ)
背中がそう語っておりました。
もう二度と会うことはないでしょう。
ニセモノ連中は残念なようなちょっとほっとしたような。
by itoyamamakoto
| 2005-10-28 18:22
| エンジョイ!学生生活