2006年 08月 30日
中印摩擦の夜明けかも |
中国企業インドで差別に直面
通商担当高官語る
【8月30日=The Times of India】 Beijing:中国企業はインドでプロジェクトを希望する他の国々との入札競争において深刻な差別に直面しているー。中国貿易促進会のWang Jinzhen(王錦珍)秘書長はこう話した。
「中国企業の場合、たとえ価格と品質の面で競争力があったとしても、いわゆる『安全上の理由』のため、その提案のいくつかは受け入れられないのです」と王秘書長。
同秘書長によれば、インドにおける様々な分野のプロジェクトに参入を希望した中国企業数社が、彼らの提案が受け入れられるかどうか、判断理由の不透明さに落胆させられたという。通信機器メーカーのHua Wei(華為?)の場合、6000万ドル規模の提案の受け入れに対してインド側からは難しいという回答で、別の中国企業はインド国内での新空港建設で橋梁建設の契約を結んでもらえなかった。「Hua Weiはいわゆる『安全上の理由』のためにその計画を実行できなかった。空港の橋を架ける企業にもどんな安全上の理由が求められているのか、分からない」と述べた。
中国の製造業者数社はインドを国内外の市場に向け、自社製品の生産力を向上させるための新たな拠点とみなしている。王秘書長は間もなく始まる「インド製造展」が、両国間企業が将来性のある共同事業をすすめるための重要なステップアップになると期待。
しかし両国間の通商、投資関係を発展させるにはまだ取り除かれるべき障害がある、という。中国の投資に対するインド側の必要以上に神経質な態度、中国企業による安価な製品の不当販売を禁止する流れは大きな二つの障壁だと話した。
【評】
実は今回の記事、同日付けTOI紙の一面にでかでかと掲載された「インド 中国企業への窓口を閉鎖 ハッチソンの巨大計画棚上げに」という内容の関連記事といったところ。
本筋のニュースは香港ベースで世界有数の海運企業「ハッチソン」がムンバイにコンテナ基地をもうけるための許可を求めていたものの、中央政府による「安全上の理由」のために計画が立ち消えになってしまったというお話。
おそらくはTOI紙の記者が北京で王秘書長とやらを取材したのが端緒となって公になったニュースなのでしょう。
ところで
「中国貿易促進会」とはなんぞや?
と中国語版のHPを調べてみると、偶然にも同じような内容のリポート「王錦珍秘書長≪印度時報≫の取材受ける」を発見してしまったのね。
さすが中国らしいというか、友好、発展などという「美辞麗句」のオンパレードですが、ちくりと針を刺すのも忘れていない。
とりあえず下記をご参照。
王錦珍秘書長≪印度時報≫の取材受ける
中国貿易促進委員会の王錦珍秘書長は8月24日、中印貿易協力問題について「印度時報(Times of India)」の取材を受けた。
王秘書長は取材に対し、中印間の貿易は現在良好に発展、この数年は貿易額の伸びは34%にのぼっており、これは両国政府の支持、ビジネス界の努力と切っても切れない因果関係がある、と指摘した。去年の両国間の貿易総額は187億ドルで、今年はさらに220億円に達すると予測、両国とも貿易総額にしめる割合ではまだまだ低くとどまっているものの、今後も飛躍的に増加する趨勢だという。両国政府は2010年までに500億ドルという目標値を設定しているが、現状を分析すると、さらに今一歩踏み込んだ協力関係が必要だという。
王秘書長は、中印間貿易が更なる発展をとげるには、互いの認識を歩み寄り、改善すべきいかほどかの問題が存在しており、インド側が中国の市場経済の本質をまだ理解していない、双方とも貿易、産業の領域がまだ多元化していない、インドに商業目的で投資する際のビザの発給環境がスムーズ、透明ではない、インドにおける投資環境で中国企業が不公平な待遇を受けている、などこうした問題こそ両国貿易の正常な発展を阻害しており、早急な解決の必要性を訴えた。
王秘書長によれば、今年は中印友好年で、同促進会はインド側の団体と共催で、9月上旬に北京で始まる「インド製造展」や「中印CEOビジネスサミット」など両国貿易促進を目指した一連のキャンペーンを計画している。
「印度時報」はインド第一の英字新聞で、2005年の発行量は243万9千部におよぶ。
今回の印中両サイドの対応で気がついたことを何点か挙げるとすれば、
インドTOI紙の批判的スタンスは中国マスコミさんたちよりも政府批判に代表されるジャーナリスティックな表現が可能である
中国側はインドを持続的な経済発展のため有望な投資環境(補給庫)とみなし、実際かなり攻勢に出ている
インド側は今のところ完全に受け手側で、しかも中国に対してはかなりの警戒心をもっている
ということでしょう。
この7月に紹介した「シッキムーチベット自治区間での印中国直接交易スタート」などとは規模の影響も比べものにならないくらいの「うねり」が平地では始まりつつあるということ。
今回とりあえず「安全上に理由」からポシャりそうなことが明らかになった「ハッチソン」や「華為」のプロジェクトにしたってこのままたち消えになるはずもなし。
中国側から今後二の矢、三の矢が飛んでくることでしょう。
インド政府にも、どっちが社会主義国か分からないようなかたくなでお役所的な態度ではなく、実利的でいて国内における中国のプレゼンスを必要以上に高めないような、老練なカウンターパンチを期待したいものです。★★★★☆
by itoyamamakoto
| 2006-08-30 02:58
| これは面白ニュース!?