2006年 06月 27日
ひさしぶりの独りたび |
これで最後?チベ日記40
サガ-シガツェ
とうとうお別れの朝。
約20日間行動を共にした4人と旅路を分かつときがやってきてしまいました。
じめっとよりさらっとが好きなんで、ギリのギリまで何も言わずにだまって荷造り。リュックを背負って部屋を出るときになって初めて、
「じゃあ、先に行くから。まぁ地球のどっかでまた会うだろうし、ね」
と70年代ハンサムボーイ並みのさわやかさ。
たぶん頭の中では「カトマンズのピザと冷えたビール」で充ち満ちた4人に熱く、暖かく送り出していただいたのでした。
ところで、
たかが食いもんだけのためにサガからランドクルーザーを飛ばして1日で国境を越え、カトマンズまで行ってしまう予定の彼ら4人組なんだけど、実はわたしのほうがより長距離な移動ををするつもりってことはご存知でしょうか。
わたしの目的地はシガツェ。
サガからの距離は約450キロ。
8時に出発するバスが8時に到着するという、ドラえもんの「どこでもドア」でもない限りは丸々半日12時間かかるという強行日程。
さらにわたしの方にはもう一つ問題があって、ツアーグループの旅行許可証をもつドライバーとも分かれちゃったわけで、検問所があった場合、ここはまだ外国人非開放地区。非常にまずい状況(拘束&罰金)に陥ることだってあるってこと。
ところが招かざるものほど引きつけるフェロモンを身につけてるようで、そのヒヤヒヤポイントはすぐ町外れにあって、バスに乗ってからたった10分後には到来。
「乗客は全員身分証を持って検査場の方に行ってちょうだい」
とバスの運転手が一言。
いい加減な検査だったらいいなぁ、と思いつつ、パスポートじゃなくて西南民族大学の留学生証の方を提出してみたんだけど、あっけなく
「これじゃくてパスポート。あと旅行証も出せ」
だって。小手先は通用せず。
それじゃ仕方ありません、と
「わたしは正規のツアーに参加してたんですが、旅行証はガイドが持って行ってしまいました。彼らはネパール、わたしはラサ方面に行くもんでして…」
正直に申告してみると、どっかに携帯電話をかけ始めたものの、会話はチベット語にて二言三言にて終了。
「行ってよし」
となったのでした。
わたしが根っからの正直者だったからよかったのか、それともラサに戻る方向だったからよかったのか、それとも単に最近のチェックは甘くなってるからなのか
それは神のみぞ知るわけだけど、もし機会のある人、「ガイドが許可証持っていった」は結構使える言い訳かもよ(笑)。
さてさて、その後もチェックポイントは2カ所あったものの、特に厳しい雰囲気はなく余裕の通過。
ただし、移動自体はもう暇を通り越して生き地獄の様相。わたしもあえて生ける屍、冬眠状態に入ってしまい、窓から見える景色も乗客たちの会話もわたしの感情をオールスルー。
唯一感情の起伏があったといえば、検問所でのやりとりを見ていてわたしが中国人ではないと知ったドライバーが
「外国人は中国人の料金の2倍だ。本来なら150×2で300元だが、特別に200元でいい。だから今追加で50元払え。前の外国人は300元払ったんだぞ」
と言ってきたときくらい。
ほんと、よけいなエネルギーを使う価値もないくらいしょうもない「小者チック」なドライバーで、とうぜんそれも
「彼は彼。私は私。バカなこと言うな」
で終了したのでした。
そしてまた休眠状態…
…めでたくのシガツェ到着は予定ちょっと遅れの午後8時半。
◎参考写真:「まずい(不好吃)!」と主張する店の門をくぐるにはまだ体力回復の道すがら
10年ぶりに訪ねた老舗安宿テンジンホテルは高級感をかなりまし、まさに
シガツェ版「ヤクホテル」を目指しました
というもくろみがありあり。
6人部屋(40元!)にはスイス人と謎の東洋人の2人。
向こうにとってもわたしはかなり謎の東洋人だったようで、ようやくその東洋人さんが声をかけてきたのは夜も11時を過ぎたころ。
東京の超有名中高一貫校の物理教師の職をこの春めでたく捨てて、チベットにやってきてしまったというお方。
見た目はの「課長→部長→取締役」の漫画作者にそっくりな人。
ほぼ同じような日程で別のカイラスツアーに参加。われわれより一足先にラサに帰ってきたんだけど、またシガツェ周辺を攻めたくなったとかで、この町に戻ってきたということ。
彼が教師時代、学生に解かせていたプリント「高3 物理 特別授業Ⅱ期 補充問題(13)加速度の扱いなど」の裏紙にひまわりの種をてんこ盛りにして、ラサビールで乾杯。
世の多くの人から、かなりの万能選手に思われてるわたしだけど、実は物理と化学の両分野だけは全くの白旗宣言。
裏紙といえど、表紙のバネや滑車の図が透けて見えるだけで、鳥肌立って身の毛がよだって、要するに頭の回転が自動停止状態になっちゃうわけ。
だから、
「いやあ、ラサに来てひまわりの種を食ったら差し歯が欠けましてねぇ」
と、先生がせっかくいいパスくれたというのに、
「前歯にかかる力の物理学的な計算はなされなかったんですか?」
というどうしょうもないシュート。
「何とも。考察が足りませんでした」
…夜は更けていきました。
by itoyamamakoto
| 2006-06-27 11:24
| またまた旅に出ました