2007年 05月 23日
まとめて全部インド的 |
今のところこの日記を読んでもらってる人には、
牧場主は漢語水平考試(HSK)受験のために東京に行き、そのついでに友だちとの遊びに興じている
ということになってるんでしょうが、もう一つ、7月下旬からのJawaharlal Nehhru University(JNU)留学生活2年目を滞りなく迎えるため、インドの学生ビザ再取得という作業も密かに続けておりました。
実際にはまだ何の進展もなかったんだけど、このほどその作業がめでたく「秘密工作」といえるモノになりましたので、謹んでご報告させていただきます。
まあその前段として、インドに汚された者なれの果て、悲惨な日本人たち紹介しましょうかね。
午前10時、地下鉄九段下駅のインド大使館に一番近い出口に集合
JNUチャンドラバーガ寮にくらす日本人留学生チャンドラバーガーズの2人、わたしと同じくビザ再申請が必要なTakaと秋葉原に用があるというY二郎との待ち合わせ指令。
インド人学生たちに日本語を教えていたころは眉をつり上げ、「5分前集合厳守!」と繰り返していた男たちでもあるんだけど、当然のごとく午前10時に当該出口に現れたのはわたしだけ。
でも、
「たったの5分、10分遅れたくらいで、これまで築いてきたチャンドラバーガーズの絆はびくともしませんよ」
と余裕こいて目を通しはじめた日刊スポーツ。
次の日曜に迫った日本ダービー特集に至るまで細かく読み込んだところで、待ち人ともに来たらず。
「さすがに遅いなぁ、でも俺が時間間違えたはずはないしなぁ」
現実:午前10時半すぎ、両雄@柏、@練馬ともに夢の中
そう、まるでわたしはピエロ。若いツバメにもてあそばれた三十路。Takaさまにいたってはわたしの残した通話履歴にようやく気づき、
「ちわっす!」
と元気な第一声。
そりゃあ、こんな時間まで寝てたんだったら、すがすがしくお腹からそんな発声もできるでしょうよ。
万が一にもわたしの日記を読んでインドに興味をもった、さらにはインドに行ってみたい暮らしてみたい、要するに「地雷を踏みたい」と思われたみなさん、かの国の水に1〜2年も浸ればこれくらい「人でなし」になることは覚悟してくださいね(笑)
けっきょくのところは自分一人で申請することになったインド学生ビザ。
ただし、その取得について必要とされる書類はかなり曖昧、いい加減、つまりは「インド的」なのです。
観光ビザ申請のときにも提出する所定の申請用紙と顔写真以外、いったい何が求められるのか、特に2度目の学生ビザ申請ともなれば、そんな細かい事例まで親切丁寧に明記してるはずもなく、これはもう相手の出方次第。
つまりは
少しでも過去の情報を仕入れ…
必要と思われる物は仕入れ…
必要だけど入手が困難な物は屁理屈添付してでも代替措置を案じたうえで…
現場では担当係員のご機嫌をつぶさに観察しながら…
最終的には、これが一番大切なんだけど
それでも必ず発生する意外事態に冷静に対処できるような心の準備も怠らず!
かなり高度なシミュレーションゲームが楽しめます。
もちろん、
「Bonafide certificate(在学証明書)だけで十分ですよ」
と、かつてわたしに説明してくれたY二郎さんのように、当たって砕けて、インド人と感情あらわな罵り合い交流のはてに必要な物を手にするという土臭い方法もありますが、わたしはどっちかというと泥水の上でも純白な革靴を全く汚さずに歩いて行きたいタイプ。
少なくとも在学証明書以外、インドに留学するにたる十分な資金があるということを証明するための口座残高証明書がおそらく必要であり、さらに簡単な経歴(英文)もいるかもしれないという情報をゲットした上で、対策を講じてたわけです。
在学証明書についてはインドにいるうちに国際関係学部の学生課で所定の用紙に、お偉いさんのサインをもらってました。ただし来年度のビザ申請のための証明書が必要なんだといくら念を押しても、
「この学生は2007年7月まで本学部の所属であることを証明する」
という文だけOKだと言い張るんで、やはりここでも一仕事。「コースは合計2年間であり、さらに1年間の延長も可能である」という文言を力業で追加させた逸品。汚い手書き文字が加わって怪しさを増しただけ、という噂もありますが(笑)
いっぽうの残高証明書については、まずはまっとうなところでシティバンクに証明書の発行を依頼済み。翌々日朝には受け取り可能でお代は約1500円。
でも、昨年大阪のインド領事館で初めて学生ビザ申請した時は口座残高証明書なんてちゃんとしたもんじゃなく、銀行ATMの残高照会のプリントアウトでOKだったということは、なかったらとさすがにやばいというだけで、たぶんそれっぽい物があればもう十分、というのが向こうさんの本音ではないのか、と推察しました。
つまりは今回もATMのレシートも用意したわけです。
さあて、相変わらず作業の遅いインド領事館。100人以上の申請者をさばくのにいつしか時間は正午すぎ。とりあえずわたしのスタンスは決まっておりまして、
ズバリ、どこまでいい加減な申請でOK牧場なのか?
まずはパスポートに申請書と顔写真だけを提出して、そこから少しずつ相手の反応をうかがいながら、手の内のカードを出していきましょう、というもの。
何でわざわざそんな交渉めいたことをしたがるのかって?
久しぶりのインド世界、それくらい楽しませてくださいよ(笑)
そんなわたしの気持ちをくみとってくれたかのように、わたしの番号札が示した受付窓口は奥の主にインド人職員が待機する部屋にあるデスク。
いい加減昼休み時間帯に突入したんで、日本人職員二人だけに任せず、インド人スタッフも申請受付作業に投入された、というのがおそらくの裏事情なんでしょう。
わたしの目の前の職員は見た目ちょっと浅黒いモンゴロイド、つまりは東北人(インド版)だす。
「ん?学生ビザの申請?」
「はい、JNUの学生です。7月から修士課程の2年目が始まりますんで…」
「…。学校の証明書はあるのか?」
「はい、これです(在学証明書を提出)」
「ふん、じゃあちょっと外で待つように」
「はい(お〜っ、これで大丈夫なの?)」
英文経歴どころか、銀行の証明もいらない、こんな楽勝でビザがとれてしまっていいのか。インドだよなぁ、とあふれる笑みをこらえきれずに待つこと数分。
再び東北人登場。
「ビザの発給はできない」
「へっ?」
「お前のパスポート。ページの部分が剥がれかけてるじゃないか。新しいパスポートを作り直してからまた来い」
たしかに最終ページと裏表紙を固定してしていた部分が完全に剥がれてます。ページ部分を構成する冊子は辛うじて表表紙と結合するのみ。でもテープさえあればどうにでも補修できるはずで、パスポート新調はどう考えたって大げさすぎる話。
「えっ、じゃあテープかしてくださいよ。それで補修しますんで」
「それでは受け付けられない。新しいパスポートでなければビザは発給しない」
「えっ、パスポート発給には相当時間がかかるんですよ。わたし、来週からでもアメリカに行かなきゃいけないんですが、そんな時間ありませんよ」
「それは関係ない。とにかく大使館ではこのパスポートである限り無理なのだ」
いきなり出てきたアメリカ話は置いといて(笑)、ここでさらにウソ八百を並べたり、声を荒げたり、挙げ句の果ては奥に控えるお偉いさんのところに直接乗り込んでみたり、過去一年間のインド滞在で身につけた「寝技」の数々を披露するというのも一つの選択肢ではありました。
が、
その奥の手が通用すればめでたいんだけど、ちょっとリスクが大きすぎる。一歩間違えばわたしは要注意人物の烙印を押され、この大使館どころか大阪の領事館でもビザを発給してもらえなくなるかもしれない。
ということで、向こうさんたちの記憶の片隅にも残らないようにするため、ここは潔く身を引く方が賢明と判断。
今後の対策としては、とりあえず明日までに補修して再申請、それで受け付けてもらえなかったら大阪の領事館で再チャレンジ。そこでもアウトだったら、それこそ一週間かけてパスポート再申請の悪夢が現実になってしまう、のか?
つまりは、こうした次第なのです。ああ、全くもってインド的。
現場では担当係員のご機嫌をつぶさに観察しながら…
それでも必ず発生する意外事態に冷静に対処できるような心の準備も怠らず!
ねぇ、十分楽しめるシミュレーションだったでしょ。
午後、池袋のサンシャイン60にある東京都のパスポートセンターに出向いて、増補またはパスポートの補修が即日または短期間にできないか問い合わせたところ、
「この破損状態では増補はできません。パスポートの再申請をしていただくことになります。佐賀に帰る必要はありませんが、受け取りは30日ですね」
そんなにわたしに東京にいてほしいのか、と突っ込みたくなるくらいのお答え。
…もう、迷うことはないでしょう
大いなるちからに導かれたかのように何の迷いもなく、サンシャイン60に隣接する東急ハンズのドアをくぐり、紙vs紙、紙vsラミネートに強いというマニアックな接着剤をそれぞれ購入。
そして新宿の某漫画喫茶店の隠れ家的ブース内にて「地下工作活動」をスタートしたのでした。
時間は術後の経過も含めて約15分。
高須クリニックで整形したくらいにめでたく「完全無欠に美しい姿」を手に入れることに成功したのでした。
それにしてもインド大使館、および日本のパスポート行政のなんと前世紀的なことか。壊れたからすぐに新しい物に取り替える、そんな社会の考え方こそわたしは受け入れられなかったんです。物を大切にするという心を忘れてしまっては人類に明るい未来はありませんよ
と、パスポートの工作員なので小声で言ってみました。
ともあれ、あしたの再挑戦、どうなるのでしょう…
by itoyamamakoto
| 2007-05-23 18:10
| 他にもまだこんなこと