2007年 05月 21日
メイド喫茶deY汁理論 |
「そうだitoyamaさん、アキバだ。メイド喫茶行きましょう!」
まだ週も始まったばかりの月曜日。昼間っから日本人の胃袋、築地場内でかわされる会話、…健全です。
Jawaharlal Nehru大学(JNU)のチャンドラバーガ寮に暮らす日本人留学生たちによる日印両国政府非公認の任意団体「チャンドラバーガーズ」は現在、全員(とはいっても3人だけだけど)が東京近辺に存在しております。
インドにいる間は傍若無人、怖いもの知らずの勢いでぶいぶいいわせていたあの猛者どもも日本に帰ってきちゃうと一転、世間のリズムになじめず何をしてよいかも分からず、これはもう牙を抜かれたライオンか、借りてきたネコみたいなもの。
それに週末こそ、そのもの珍しさから相手をしてくれる人がいたりもするんだけど、平日ともなれば差し伸べられる救いの手はもう激減。
まったくの手持ち豚さんなもの同士、わたしとTaka氏は築地場内の定食屋で傷をなめあうようにして激ウマ焼き魚定食および煮魚定食を平らげ、午後からの行動についてだらだらと思案を重ねていたわけであります。
そして挙句の果てに出てきたアイデアが「秋葉原のメイド喫茶に行こう」というんだから、涙もかれますな。
「Taka君、われわれの使命はなんだったかね。『インド人たちに本当の日本を理解してもらう』だったはずだろ? 教室で本を読んだりするだけじゃ分からない日本文化こそ、インド人教師ではなくがわれわれが学生に伝えなきゃいけないことであって、メイド喫茶訪問? これはある意味避けては通れないイベントではないのかい」
と、のたまってみました。
ということで地下鉄乗り継ぎ、秋葉原。
たどり着いたはいいんだけど、単なる思いつきでやってきたため、いったいこの町にどれくらいのメイド喫茶があってそれがどこに存在しているのか、何も知らないということを知っちゃったときはもう後の祭り。
必要以上に町をさまよい歩かされ、インドの灼熱を生き抜いてきた「鋼鉄の意思」もくじけそうになりながらも、なんとか@home cafeと名乗るメイド喫茶に到着。
何事も初体験というものは非常にテンションが高まるものでして、ビル6階にある受付で人数を伝え、洋風か和風かを選ぼなきゃいけないそのシステムにバーガーズの二人とまどっていたとき、よりによってわたしの携帯にコール。
応じてみれば、どうやら実家の母親をなのる人物からで
「何ね、makotoね。あんたわたしの携帯に電話かけたやろ?」
「えっ、あっ、おれ? おいがかけたてね、そっ、そう? そげなつもりはなかったちゃけどねぇ。 あっ、そうそう、俺もうちょっとこっち東京におっと思うけん。 うん、別に何もなかよ」
まったくなんと絶妙なタイミング、だからこのように不自然なほど饒舌になってしまうでしょう(笑)。
こうした数々の苦難を乗り越え、インド人に日本を伝えるという大儀も忘れず和風喫茶を選んだわれわれ。同じビル5階にある「@home茶房」に乗り込んだのでした。
「お帰りなさいませっ、だんなさまっ!」
「だんな様、おつかれさまでございます。こちらへどうぞ」
などと言われ、
「なんで『お帰りなさい』なんだ。いったいお前たちは何なんだ」
とまだまだ、この場に溶け込むためには越さなきゃいけない壁、捨てなきゃいけないプライドは放棄できずにいるわれわれ。
泳ぎまくる視線ついでにどうしても気になってしまう客層を眺めてみると、典型的な「をたく」っぽい怪しげ一人客も確かにいるんだけど、カップルや大人数グループなどもわいわいやってたりして、思ったほどいびつなところはなし。
ただし、ここを場末のスナックかキャバクラか間違えてしまったのか、とにかくバリバリのやくざ風情の男三、四十台二人組みがいたりして、喫茶なのにビールなんかを注文してたりして、そっちはかなりウケましたが、ね。
できるならこのままほっといてもらってコーヒー飲んで帰らせてほしいってのがわれわれ本音なのに、そんな心を見透かしたかのようにからんでくるのがメイド(服務員小姐)さん。(まあ、それが仕事だし、だからコーヒー一杯500円もするんでしょうが)
カウンター越しにわたしの前に正座しては
「だんな様、本日は『めがねデー』でございます。簡単な問題を出しますので、それに答えていただきます。賞品も用意してございますので…」
と切り出したかと思うと、勢い、クイズをはじめてしまう。
「ここ@home茶房は何階にあったでしょか?」
「ボケろぉ、ボケろぉ~」と小声でささやき続けるとなりのTaka氏。
(そんなぁ、こんな状態でなにいやいいのさ。メイド喫茶でギャグ言ってすべったなんて伝説残したら末代まで笑われるし、メイドに「目力」使うわけにもいかんしなぁ。)
とマジであせるわたし。
結局何もひねることできず、不本意ながらも特製ボールペン1本目をゲット。今日ほどめがねである自分をうらんだ日はありませんでしたな。
で、1本目ということは続いてボールペン2本目を手にする状況が重ねて訪れてしまったのでした。ほんとにここは客をほっとくことを知らない最低な喫茶店でございます。(だからメイド喫茶なんだって)
店の中央に二人のメイドがマイク持って登場。
「ゲ~ムタ~イム!」
と言い出し、よりによってわたしら二人の席は彼女らのまん前。無視することもできずに何をはじめるのか成り行き見守れば、じゃんけんゲームの始まり。
客に
「アットホームで萌え萌え、じゃんけん、じゃんけん、ぽい♪」
の大合唱を強いるだけでは満足できず、両手で@の形を作らせ、それを左右に振りながら、さらにグー、チョキ、パーでウサギの耳や招き猫ポーズなんかをとらせ、そして、歌の終わりに客それぞれがじゃんけんの手を出して、メイドの一人と勝負するというこれまでに味わったことのない屈辱プレー。
ただし、ここまでくると何か点ってはいけない炎に火がついてしまったようで
「じゃんけんといえば、今は亡き、『Y汁理論』でしょう」
と、こちらはこちら流のハイテンションで応戦。
「じゃんけんは決して確率のゲームではない。状況によってグー、チョキ、パーの出る確率はそれぞれ3分の一ずつから大きく変化する」
というT中Y次郎氏の提唱される高尚な理論、まさに「アキバのメイド喫茶」ほど死に水を与えてやる、いえいえ、その正当性を証明するにふさわしい場所はないのでありまして(笑)
結果、
天はわれわれにあり
…みごと、優勝してしまいました。
「おめでとうございます、だんな様。じゃんけんおつよいんですね。」
というありがたい言葉とともに、特製ボールペン2本目と特製絵葉書をゲット。いまだ捨てられずにおります(泣)
Y汁理論バンザイっ!
もうこれで十分でしょう。メイド喫茶に入っただけでなく、クイズに答えて、「萌え萌えじゃんけん」では優勝。「冥土のみやげ」に「メイドの土産」までいただくことができまして(駄)
夜、「喫茶店出るとき、入る前より疲れたことって初めてっすよ」とみごとな捨て台詞を残して去っていったTakaちゃんと別れ、上野駅に恥ずかしげもなくインド服で現れたY次郎氏に「メイド喫茶でY汁理論完勝」のご報告。
「でしょう!だから僕の理論は使えるんですよ」
とうれしそう。
うん、来学期入ってくるであろうチャンドラバーガーズ新メンバーにもしつこいほどに語り継ぎましょう。
「君たちの先輩、Y次郎さんのじゃんけん理論はメイド喫茶で伝説を作ったんだよ」
と。
by itoyamamakoto
| 2007-05-21 20:08
| まちかど歩けば新発見