2007年 04月 24日
いざ殿上人のお宅拝見 |
世の中には奇特な人もいるもんです。
「学生を家に呼んで話をしたい」
という日本企業駐在の方がいるとかで、その通達がインド師匠アルカカットさんを経由してJNU(Jahaharlal Nehru大学)の日本人留学生らに広まったのが昨日のこと。
ちなみにその御仁は某大手商社のお偉いさん、しかもお宅がデリー有数の高級住宅地Vasant Viharにあると聞いたからには、脳細胞と共に胃袋も敏感に反応。
たぶんうまいもんをたっぷり食わせてもらえるはず。いや、そうに違いない。そうじゃないと許さない、お仕置きよ…
とまでは思いませんでしたが、淡い期待があったのは事実。
精の出るもんたらふくかき込んで、明日のテストの前祝いばい
とインド師匠先導の元、Vasant Viharをさまよいたどり着いたら、さあ、白亜の大豪邸。
いきなり素人衆はドンびきです。
それにわたし、外国生活丸3年で日系駐在員宅拝見はたったの2度目。もろにその生活範囲が忍ばれますな(笑)
さらに通されたリビングルームはわたしの寮部屋が6つくらい入りそうなサイズで、座り心地良さそうなソファーがずらり。奥に御座する薄型ワイドテレビからは当たり前のようにNHKの衛星放送がせわしくニュース解説をやっておりました。
蚊の巣窟、病原菌の保管庫、室内でも数日で砂の層ができる天然沙漠、そんなゴミダメ(=チャンドラバーガ寮)からたった数キロ離れた場所とは思えないこの異世界。
「いやぁ、いらっしゃい」とご主人。
さすがは一流企業の管理職を思わせる恰幅および話し方。
いきなりメモ用紙を持ちだし、われわれの名前と所属学部、出身地なんかを聞き始めたときはさすがにいにしえの就職面接を思い出しちゃったんだけど、たとえ日本の超バブル時代の就職活動でもあり得ないような光景が目の前にはずらり。
マグロ赤身&ヒラメの刺身、こんがり焼かれためざしにシシャモ、かめばかむほど滋味あふれ出す鮭の薫製…
さらに冷蔵庫からは当たり前のように取り出されるキリン一番搾り、アサヒスーパードライ…
インドにきてはや10ヶ月。
金があるだけじゃ決してお取り寄せできないアイテムたちだと知っているだけに、わたしはもう、ニンジンを目の前につるされ走り続けるバカ馬と同じ。
この状態でお預けくらい続けるならば、日本の国家機密だろうが、自分の恥ずかしい過去だろうが、何だってしゃべっちゃいますよ。
息つく暇さえ忘れ、刺身をかっ込み、ビールを流し込みながらも、失礼のない程度にはお話に耳を傾けていると、こちらのご主人はインド駐在二回目で今回は単身赴任。
年に一回くらいはこうして学生たちを集めては、それぞれの専攻のことを聞いたりして、あわよくばそっから自分の知識やビジネスにつながるきっかけを見つけてやろう、という従来の駐在お偉いさんイメージ像とは違ったかなり積極的な人みたい。
残念ながら今回のメンツ、自分も含めて、インド師匠以外にさしたる専門家およびその卵もおりませんで、向こうさんの期待に応じられなかったのがちと不本意だったものの、所期の目的は十分に達成しました。
さらに白ワインもたらふく飲んで、十分にお腹いっぱい、幸せ満喫になったところでさらなる驚きの展開。
「さあ、メシの準備ができているから」
と場所移動。
同じく薄型テレビから衛星放送なダイニングスペース、いやそこは日本の食卓でありました。
テーブルに並ぶは鮭の塩焼きを筆頭に里芋の煮物、シジミのみそ汁…
胃袋にはミリ単位のスペースも残ってなかったはずなのに、おかずを残さず平らげたばかりか、きっちりご飯もお代わりさせてもらいました。
単身赴任のはずなのに、この料理、誰が作っているのか?
尋ねれば、デリーの日本人学校で長年給食を作っていた料理人さんを雇っているというから、さもありなん。味も保証付き。確かにインド人のおっちゃんが厨房で小気味よく動いてらっしゃる。
「いやぁ、年をとると肉を食わなくなってねぇ。あんたら若いもんにはものたりんでしょう。悪いねぇ」
いえいえ、何をおっしゃるのでございますか。
肉ならわたしどもの小銭でなんとかなりますが、毎日魚を味わう生活こそが殿上人の印。学生身分にとっては夢のまた夢でありますから。
できることなら恵まれない子どもたち、Y二郎&Takaに煮物のかすでも持って帰ってあげたい心境だったんだけど、竜宮城の雰囲気はそこに迷い込んでしまった者だけにしか分からないもの。
わたしも仕事人時代、後輩がいた当時はごちそうしてやるのが嫌いではなく、というかそれをえさにうまいもんを食べに行くのが趣味だったりもしてました。
が、はたして50を超えるようになってから、自分の子どものような連中を家に招いて気さくに話を交わせるようなナイスミドルになれるのか。
少しだけ「すてきな年の重ね方」について考えさせられる一晩だったわけで、夢のような時間はもう終了。また「インド」であふれかえる熱帯夜にバイクを走らせるのでした。
by itoyamamakoto
| 2007-04-24 18:32
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