2005年 11月 06日
蛇は食わなかったけど |
生まれて初めて臭(チョウ)豆腐を食べました。
豆腐を発酵させた食べ物で、ぱっと見は厚揚げ。中国全土で見られる食べ物なんだけど(多分)、四川では主に路上にて、4センチ四方厚さ約1センチのぶつが4きれほど串に刺され売られてます。
その臭いは知らんふりして通り過ぎることなど不可能なレベルで、中華料理にまだ幻想を抱いていた「うぶ」な頃、町中でしばしば巡り会うこの臭いを「下水の臭い」か何かだと勘違いしたくらい(笑)。
中国人なのにまだ「未臭」なジエジュンジュさん。
食べ物に対してはなるべくハードルを低くしているわたし。
ともに「中国人なのに食わないとは何ごとだ」「食ったことがない人に言われたくない」みたいな話になって、春煕路の外れにて未経験者二人食べてみることになったのでした。
ちなみに臭豆腐といえば語言大学留学時代、担任のビエ老師が
「臭豆腐は本当に『チョウ』!!」
と言っていたことが思い出されます。本当に思い出すのも嫌そう、あのとっても農民チックな純朴なお顔をゆがませながら。
一串一元。
食べる前にもう一度油で軽くあげてもらって好みに応じて唐辛子をまぶして
かぷり、と一口。
ところが、
いつものくせで唐辛子をまぶしすぎたせいで味がよく分かりません。ただホットでほっと(熱くて辛い)なだけ。
さあ、くさやか、ロックフォールか。
そんな「ゴミダメからお宝」を発見できるかもという期待すら抱いたというのに、「拍子抜け」という日本語を教えるいい機会にしかなりませんでした。
ところが、四川人のくせに唐辛子控え気味だったジエジュンジュさん。微妙な味が分かってしまうんでしょう。なんか表情も微妙です。
「臭いはあまりきつくないけど、何だか酸っぱい」と3個目でギブアップ。
臭豆腐勝負はわたしの勝ちでした。
でも多分もう食わんけど。
そろそろ辺りも暗くなり、本格的にお腹も減りだした頃だったのですが、じゃっかん勝ち誇ってみたのが間違いだったもよう。
「夜ご飯はへびを食べましょう」
さらにゲテモノ勝負2回線を挑んで来るではありませんか。
「へび!?」
とここで引くわけにはいきません。さすが中国人。勝ち逃げは許さないか。しかもやけに涼しい顔。これは経験済みみたい。勝てる勝負を挑んできやがったな。
第二ラウンドのためバスで移動中。
「成都で蛇を食べれる店って少ないよね?」
「へびですか。結構見ますよ」
「へびは食べたことないんですか?」
「ないない。ありえない。市場なんかで売ってるのだって見たことないし」
「魚市場にはどこにもあります。」
「そうだったかなあ」
「まあいいよ。分かった。ぼくはどんな国に行っても、その地元の人たちが美味しいと思ってる食べ物ならきっと美味しいに違いないと思って一度は食べてみることにしてるから。偏見はよくないね。覚悟しました」
「覚悟?」
「うん。我己経作好精神準備了」
「我們只吃蝦、怎麼要精神準備口尼?」
「えっ、今なんて言った?エビ(蝦)?」
「そう『シア(xia1)』ですよ」
ちょっと怪訝そうな顔をするジエジュンジュさん。
「ちょっと待って。『シャ(she3)』じゃないの?」
と言うわけで種明かしの時間。
「シア(xia1)」はえび。
「シャ(she3)」はへび。
「えび」を「へび」と発音してしまったあなたが悪い。
でもありがとう。わたしはかなりうれしい。だって蛇食うよりエビ食う方が絶対うまい料理に決まっている!
バスもちょうど最寄り停留所に到着。民族大学にも近い中産階級の町「玉林」。ありました。ありました。軒先に「盆盆蝦」という料理名を大きくアピールするお店。
あろう事か行列です。
20人以上が待ってます。
ガラス越しに店内を除けば、老若男女、左手にはビニールの手袋をはめて戦闘態勢。一心不乱に殻を向いております。
これこそ2980円毛ガニ食い放題の光景。
またはこれ(→http://itoyama.seesaa.net/article/8762848.html)。
空席待ちの間に見に中国語(食)講座。
この「盆盆蝦」はペンペンシア(pen2pen2xia1)と読むらしい。
盆は日本の盆みたいじゃなくて、そこの深い器のこと。
ここの食器は全部陶器だったんで、何だかオシャレな店に見えてしまう。
でも騙されるな!
器には麻辣の液がなみなみ。もちろん真っ赤だから中は見えないんだけど、人民はその中をすくって「えび」を取り出してます。
結局30分待ちました。
店に入りました。
すぐ注文。
「盆盆蝦」は一斤(500グラム)で25元(約400円)。スープの味は5種類くらいから選べるんだけどわたしに「麻辣」以外はあり得ない。あとは麻辣の具合を「軽、中、重」からまた選択。ここで泣きを入れたのはジエジュンジュさん。
しょうがないから「中」でお願いしますた。
付け合わせにはマッシュポテトと青菜の炒め物。もちろんビール。
運ばれてきたのは各テーブルお約束のようにおかれている巨大丼型陶器。
どかん
すくってみれば出てきます。真っ赤なしっぽたち。
20尾くらいかな。
さわってみる。
手袋してても熱いこと熱いこと。液体は完全に火鍋油と同じ。指先から伝わってくる温度は230度。
◎参考写真:熱すぎて熱すぎですぐにでも手放したいのはわたしの左手。
でもよく見ようよ。
エビっていうより、ミニ伊勢エビみたいな格好してません?
足の生え方とか足の長さとか。殻の固さとか。
「これってなにエビなの?」
「中国語では『小竜蝦(xiao3long2xia1)』です」
「それザリガニやん。えびじゃなかやん」
「殻硬いはずやん」
小学校の頃、一時期バカみたいにのめり込んでたザリガニつりを思い出しました。場所は決まって家から約10分。里山のようなうっそうとした木立の中にあった周囲50メートルほどの池。
一匹目は煮干しでつるんだけど、2匹目からは釣れた一匹目のしっぽを胴体から切り離し、皮をむき、生のしっぽを釣り糸に結びつける。こうすれば驚くほど入れ食いになること。
そのぷりぷりのむき身が子供心に車エビの躍り食いと同等のすごいご馳走に思え、何度も口に放り込みたい衝動に駆られたこと。
でも母親から『ザリガニつりはいいが、絶対ザリガニは食べるな」という今思えば「何てお間抜けな注意を受けてたんだろう」ということなどなど、思い出しました。
20年間の時空を経て、さらに故郷から数千キロ離れたこの中国の奥地で、当時の欲求がかなえられたかと感無量です。ちょっとザリガニが小振りで身が少ないのが玉に瑕だけど。
二転三転させて結局ザリガニを食わせてくれたジエジュンジュさんさん感謝です。
っておい。聞いてます?
完全に「麻辣(中レベル)」にやられて放心状態じゃないっすか!!!
ザリガニ味わう余裕なし。当然わたしの話を聞く余裕もなし。
大丈夫か。四川人。成都人。
てなかんじで満足至極。げてもの食い2連勝な週末でした。
※本日の拙ブログ、全世界数億臭豆腐マニアの方々のお気持ちを逆なでる表現が数多くちりばめられてしまいました。舌足らずなバカ者のたわ言として、その広い心でどうか水に流していたきたいものです。どうかよろしくお願いします。
by itoyamamakoto
| 2005-11-06 18:01
| 食い物、飲み物腹一杯