2005年 12月 05日
敢闘の精神を添削する |
寒かった一日。
バジル風味パスタとナポリタンを塾長とつつきあい、きょうはこれで何事もなく終わるのか、と濃い目のコーヒーで口の中をリセット。
すると、
「先生、きょうお時間ありますか?」
携帯からは美人秘書(民族大日本語科4年生)の声。
だいたい先生なんて呼ばれてろくなことがない。
「自己PR文を見てもらいたいね」
来年8月で卒業の彼女ら。
だから今が就職活動真っ盛り。
まだぎこちなく(失礼)スーツをまとい、こちらの合同説明会、あちらの面接会場へと駆け回っています。
どうやら第一志望の会社に資料提出するのが2日後とのこと。
何度となくお世話になっておりますわたくしですから、ここで断ってしまっては、非人間のそしりは免れないところ。
とうぜん飛んでいきました。
そういや彼女ら先週日曜が日本語能力試験だったんで、
「ところで1級試験どうだった?」
「聴覚の時間、トイレに行きたくて試験官に聞いたらだめって言われて、ずっとそればっかり気になってました」(美)
「なんじゃそりゃ。じゃ駄目だった?」
「まあ大丈夫よ。心配ないね。」(美)
日本語学ぶ学生が希望する就職先ってやっぱ日系企業なわけですが、採用基準の最低資格として同試験の1級資格を求めるところも多いらしく、試験結果は彼女らにとって冗談なく死活問題。
でも彼女はどこにその自信があるのか分からないが、とにかくその自信。
民族代日本語科においては有数のしゃべり手であることはすでに間違いないわけですが、はたして文章を書くことについてはいかがでしょう。
食堂内は大音量で流れるスポーツ放送。それに群がる男子学生たちをよそに、ちょい端っこのテーブルにて、赤ペン先生の添削が始まりました。
>自己推薦書
>本日はお忙しいなか、私の自己推薦書を見ていただき、誠にありがとうございます。
なかなかかしこまってますな。
たまたま今日はそんなに忙しくはないんで、気にすることはありませんよ。
>私は西南民族大学日本語科四年生の美人秘書(仮名)と申します。大学では勉学に励み、毎年奨学金をもらえるほどの成績を残すことができました。
そりゃすごい。
じゃあ今度なんかおごってね。
>スポーツの面では、小学から高校時代まで運動会では選手として活躍しました。汗を流して走り回った練習が実って何度も優勝しました。スポ−ツで身につけた「敢闘の精神」は誰にも負けない私の長所です。
実際に何の選手だったかと聞いたら、「1500メートル走と丸い球を投げるやつ」というかなりマニア好みなお答え。だったら、もちろん赤ペンで
「(〜が実って)中距離層や砲丸投げなどで(何度も〜)」
と書き加えちゃいました。
あと、締めのセールスポイントが、なんか戦に行く前の人みたいで、自分がかなり「前のめりな人間」であることを強調したいんだと受け取りました。
たったら、敢闘の精神を「闘魂」にしようかな。「プロレス愛」でもいいかも。最終的には「ファイティング・スピリッツ」にしてもらいました。なぜかといわれてもわたしの好みだからです。試験官さんもきっと気に入ってくれると思います。
それにしても、な〜んか昔を思い出すよね。まだ自己PRやエントリーカードは手書きじゃないといけないといわれていた時代の出来事。
大まかな印象としては彼女の日本語能力はほぼOKであることを再確認。もうひとつ、やはり日本人に比べると「押し」が強いね。売り込み売り込み。
自分だけ目立つため、質問で突っ込まれたさいに長所につながるような短所を書いて「ちょっと引いてみる」なんて戦術は、一番受け入れがたいことのようでした。
今後も就職対策講座としては「個人面接の巻」「集団討論の巻」「縁故入社の巻」と続いていくと思われます。もうしばしのお付き合いを(笑)。
by itoyamamakoto
| 2005-12-05 15:03
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