2005年 12月 15日
デマで若豚早すぎる死 |
デマは一向におさまらず
見渡す限り無駄死の年越し豚
育ち盛りでも処理解体
【12月15日=成都商報】
昨日午前3時、大邑県王泗鎮の食肉解体処理場の外には、豚の処分に訪れた農民たちですでに長蛇の列。大多数が引き連れているのはまだ6,70キロの「こども豚」に属するものだ。
毎年の習慣によれば、彼ら農民は皆冬至の後になってようやく、春節用にまるまると肥えた豚を解体する。しかし彼らはもう待てないのだ!なぜならそれは…
▼目撃:事前に豚解体する農民で長蛇
半年前、ひとつの情報が大邑に流れ始め、一帯に密かに伝わり始めた。「12月15日を過ぎると政府は解体される年越し豚に対して検疫代を徴収する」というもの。うわさによればまずで徴収が始まり、一頭当たり80元(約1200円)が必要。さらに大邑では若干お安く、それでも一頭60元(約900円)。そのため農民は期日がくるまでにこれほど多くの年越し豚を殺すことになったのだ。
12月13日は王泗鎮の市が開かれる日でもあり、このうわさはあっという間に鎮内に伝染。鎮内では豚を事前処分するブームが最高潮に達した。
梁元中さんの家で処分に準備した豚はたったの約70キロ、本来はあと一ヶ月ほど育てさらに20キロほど太るのを待ってからさばくつもりだった。ところがえさ代だけで少なくても一日1元はかかることに加え、飼料代を除いても更に60元がかかるとなればまさに「やってられない」という思い。すぐに家に帰ると家族と相談、何の躊躇もなく速やかに豚の処理を決めた。しかしこのとき鎮内にある全ての解体処理場はもう「豚の処理待ち長い列」。15日より前に豚を処理するためには、もう相当早く起きるしかなかった梁元中さん。しかし、情報経路の「閉ざされた」農村に置いて全ての農民が同じような情報を聞き入れちえることから、同様の「対抗策」を取っている農民がどれほどいるかなど、想像もしていなかった。
3時間待ってようやく、廖胡子さんの食肉処理場の門が開かれた。外からは絶え間なく鳴き続ける豚の声が聞こえたものの、彼としても解決策はなし。前の晩も真夜中0時を過ぎてようやく仕事を終えたばかり。例年年越し豚をさばくのは冬至の後、今年のお仕事はこうも早く、こうも集中している。11月下旬に始まり、年越し豚の解体に訪れる農家は後を絶たず、満面に疲れを見せた彼は昨日午後には、記者にこう告げた。「私はすでにもう半月、睡眠時間は5、6時間程度。ご飯さえ食えないような状況ですよ」
昨日午後6時。15時間も待った末にようやく豚を処理することができた梁元中さん。「これでやっと60元を節約できましたよ」と安心した様子だった。
▼調査:徴収のうわさは全くでたらめ
12月15日以降、政府が高額の検疫代を徴収するといううわさに、村人たちはほとんど何の疑問も抱かなかった。更にその事実関係を確かめるような人もまたいなかった。昨日午前、成都で働く王泗鎮出身の農民が「こんなことはありえない。年越し豚をさばくだけで我々から60元を徴収するなんて」という「投稿電話」を本紙にかけてきたのだった。
年末も近づき、また別の人間がこの機に乗じてあぶく銭を稼ごうとするかもしれない。昨日、記者は大邑一帯で調査を始めた。
食肉処理場では、村人たちが各々「徴収」の噂についてまことしやかに語り合っているものの、一人として情報のネタ元に触れるものはなし。さらに政府のどの部門が徴収するのかもはっきりせず。「私らみなが話してるのを聞いただけだから…」ここの情報は隣の新場鎮から来ている、と後にある農民は証言。記者が新場陳に向かうと、その鎮の村民は確かに同様の「うわさ」のために年越し豚の処分に追われている最中だった。しかし彼らもまた情報の出所については明確な情報はなし。「西江鎮ではすでに検疫費の徴収が始まったらしいが…」。記者は又西江鎮に赴いたものの、そこの農民もまた話のネタについてははっきりせず。ただ絶対大多数の人たちは、「情報が信じられるモノでも信じられないモノでも、それはまず豚を処分してから話せばいいことじゃないか」という態度だった。
その後、ある農民は、王泗畜牧検疫防疫徐の門に「収費広告」が張られているからと伝えてきたが、またそれも実際に調べてみるとやはりそんな広告などかったことがはっきりした。
「これは完全なデマ、私たちはそのような報告は受けておらず、そんな高額な検疫代を徴収するはずもないではないか!」検疫所の陳涛所長はそう話した。関係規約によれば、食肉販売のために豚一頭を解体する場合、処分場は必ず検疫所に報告をし、検疫を経た後、検疫所は10元の検疫代を徴収することになっている。しかし農民が自分で育て、春節用に処分する豚についてはこれまで検疫を行うのみで、手数料などを徴収したことはないという。
▼反応:担当者集めデマ防止へ
検疫所の陳涛所長の言葉を借りれば、「昨日3人が我々を訪れそのことについて訊ねた。我々はその時になってようやくデマについて知った」。検疫所はこの問い合わせた3人に対しては事実を説明したもの、更に大勢の農民に伝わっているデマの蔓延をどう防ぐかについては考えもしなかった。農民が長蛇の列を作って豚を解体しようとしている状況を記者が説明するに至って始めて、陳所長は「うわさ」がこれぼど重大な結果を及ぼしていることに気付いたのだった。午後になって同所長は各食肉処理場に赴き「うわさ」を否定して回ったが、鎮政府に対しては、当然この状況は伝わっているいう認識から何の報告もしなかった。
記者が再び、廖胡子さんの処分場に戻り、列をなす農民たちに検疫費徴収はデマであるということを伝えると、彼らは皆一様に呆然とした様子。伍家村の余さんという農民はすぐさま、かれの家はまだ豚を処分していないと話した。それに対し、すでに処分してしまった農民たちは後悔しても仕切れない様子だった。
王泗鎮政府では午後5時、党政辨公室の王正中主任は、誰もに彼らにそんな報告をしなかったためにこのようなデマのことは一切知らなかった、と説明した。王主任は、このことは鎮の責任者に伝えており、村の幹部や役人らをあつめて会議を開き、デマの蔓延防止に取り組んでいると話した。
▼かぎ:役人はデマに「不感症」?
情報不足のために、農村はデマやうわさの発信地となることが多い。「年越し豚処分ブーム」の前にも、王泗では「分戸熱」が起こった。これは、役所を訪れて印象付きで戸籍を分割する農民が桁外れに多いため、鎮静府はこのとき初めて、「桑園飛行場拡張のため周囲の農地が必要となり各戸が5000元の賠償金が払われる」といううわさが民間に広まっていることを知ったという成り行き。鎮政府はすぐさま幹部による対策会議を開いたものの、効果は思ったほどではなく、今に至ってもまだ「分戸熱」はある程度の余熱を残している。
王泗鎮政府の各部門の役人ら約70人は、17の村と2地区の計約5万3千人をそれぞれ管轄している。人力による作業には限界があるため、鎮政府では主に下から上への報告方式によって住民の状況把握を行っている。それは主に村の責任者や村に派遣した鎮政府の役人による報告ということになるのだが、この報告が往々にして遅れたり、隠蔽されたり、無視されたりするという。このため政府の対応は、まま「遅きに失する」ことに。記者が調査したかぎりでは、福田村の黄書琴、伍家村の張静の両幹部は今回のうわさを耳にしていたもののその流布防止対策は問い合わせに訪れた村民に事実を伝えただけで、鎮政府への報告はなかった。
◎参考写真:「食肉処理場」と訳したけど、これだと「簡易処分場」の方が正しい?
【評】
こんにちわ。
うわさであってもデマであっても食肉系には敏感なわたしです。
何度も登場する年越し豚ですが、原文では「年猪」。美人秘書に聞いてみると年越し用品を一括して「年貨」というらしいので、「年越し豚」と訳してみました。
春節(今年は1月末)前後には日頃の豚食いモードが更にヒートアップする中国人ですから、ソーセージとか干し肉とか、その他色んな豚関連食品を作るため、冬至の頃(12月下旬)から食肉処理などの準備が必要、というのが例年の流れのようです。
ところが今年はその冬至を前に検疫代が徴収されるという噂が勃発。
そこにお役所のいい加減さ、農民たちの過剰な自己防衛本能が分かりやすく相まって「面白事件」に仕上がった、というからくりでしょうか。
普通だったらリード(最初の一段落)に噂は完全デマだったこと、お役所の対応にも責任あることなどにも触れるのが常套手段だと思うんですが、これは完全にお話を語り始めちゃったストーリーテラーモード。
面白けりゃいいと思うんですが、ね。
草木も眠る丑三つ時から食肉処分場前に列をつくる豚ちゃんと飼い主たち。その光景はさぞシュールなものだったのではないでしょうか。
15時間も待つことを考えたら「働いてた方がかせげんじゃないの?」と思いがちですが、そんな先が見える人だったらもともと並んでいないわけで。
豚ちゃんたちの早すぎる死を悼む意味も込めて★★★★☆。
by itoyamamakoto
| 2005-12-15 14:44
| これは面白ニュース!?