2006年 08月 18日
アフリカの偶像の呪い |
わたしが暮らすCHANDRA BHAGA HOSTEL(寮)は基本インド人学生のためのもの。
だからわたしの部屋がある2階フロアの住人も一部留学生をのぞいては大半がインド人。そのなかの一室、扉には唐突にも
「やる気」
と書かれた日本語の張り紙が。
◎参考写真:ここはJNUの日本語科修士課程2年生、スレンドラ君のお部屋
すでに日本語学習5年目の彼。
豆タンク系の体格からは想像もできないことに、その日本語能力はインンド国内から超エリートが集う同大日本語科でも飛び抜けて優秀(らしく)、文部科学省から2年間の奨学金をもらって来年秋から日本に留学できることが決定済み。
ただしどの大学で研究を行うかは自分で希望機関に連絡をとって内諾をえなくてはならない、しかも今月以内に、というかなり差し迫った状況らしく、不肖われら日本人がエリートインド人輸出計画のお手伝いをすることに。
その彼の意気込みは扉の「やる気」だけにとどまらず。部屋の中に入ってみてまず最初に目に入るのは、
「絶対日本」
と書かれた鉢巻きを締めた子供の人形(体高約15センチ)。
「へぇ。そんなに日本に行きたいんだ」
「はい。どんなことをしてでも。日本に行けるなら自分の研究テーマも変えますよ」
「いやっ、そこまでしなくていいと思うよ…」
と、ぼろ船で東シナ海を渡る中国人密航者より日本への本気度は高き彼。
趣味がないことを我々日本人に指摘されたら、急きょ
「アクティング(演技)を習い始めましたよ」
「えっ。いやっ、もっと普通っぽいこと始めた方がいいんじゃない?」
と我々を驚かせてくれた彼。その天然系具合はかつての迷優三遊亭あほ陳をも彷彿とさせ、今後も十二分にわれわれを楽しませてくれそうな彼。
約3万ルピー(7万5千円)で購入したというコンピューターはネット接続、日本語入力ともに可能で、我々日本人勢力は日本の各大学のホームページ(HP)などを調べては、受け入れ先と思われる部署や教授にメールを送るお手伝い。
その過程はまた正式決定のおりにでも触れるとして、本日は彼がこれまでどれくらい真剣に勉強してきたかを紹介。
その真摯さを端的に示すのが机の前にはられたスレンドラ選「美しい日本語」集。
日本語学習を通じて彼が
「この表現は素晴らしい」
と思ったらしい単語やフレーズが約30種類。
荒廃などから復興(など?)
無駄な抵抗はやめろ(いつ使う?)
態本県(モッコスへの挑発?)
討議資料(何を討議にまでかける?)
消化器系統(お腹悪いの?)
「すばらしい」に対するこれだけ不可思議な判断基準をちゃんと理解できるようになれば、さらにディープな日印交流につながるにちがいないと思ったりするわたし。
そしてさらに極めつけが「日本人への質問」と書かれたメモ用紙。
しょっぱなから
ホテルハイタワーはアフリカの偶像に呪われているなんてばかげたことを信じている男
と、まるでコントのお題のよう。
それを見たわたしとTakaちゃん。すかさず
「今度ホテルハイタワーに行くんだけど、その前にお払いしてもらわなきゃ」
「なんでだよ」
「お前知らないの?あそこアフリカの偶像に呪われてんだぜっ」
「んなアホなっ!」
わたしらなりにその「質問」に答えたはずなんだけど、スレンドラ君は「インド人もびっくり」といった感じできょとんと完全放置プレー状態。
中国でも日本語学習者たちにはさんざんお世話になり、笑かしてももらったんだけど、この国にもおりましたダイヤの原石が。
漢字も一から勉強しなきゃいけないわけだし、中国人よりさらにハンデのあるインド人たちにもこれほど必死に日本を学ぼうとしている学生たちがいること、正直うれしいことなんで、今後もいろいろウオッチングさせていただく所存です。
どうぞよろしく
by itoyamamakoto
| 2006-08-18 18:36
| いろんな交流してます