2006年 07月 05日
最後の最後で湖(幸)運 |
これで最後?チベ日記48
青蔵鉄道搭乗記・前編
7時14分35秒。
ドミトリー(相部屋)住まい歴幾年月のキャリアにふさわしく、すやすや熟睡中の同部屋人に極力迷惑をかけないよう、目覚ましがなる25秒前にぴしゃっと目覚める超人的な体内時計を持つわたし。
さあ、でかけましょう。
昨夜のうちにまとめておいたリュックを背負い、去り際は極めてあっさリ静かに。
「次にくるときは5つ星くらいになってるかも」
なんて思いながら、都合40泊くらいお世話になったヤクホテルを後にしたのでした。
ちなみにこのヤク。
実際10年前はただの安宿だったのが今じゃ黄金の2つ星。ありえない話じゃないんだよね。
さて、今回は悪い人にめぐり会うこともなく、ミニバス、大型バスをスムーズに乗り継いで、でもぎゅうぎゅう状態のままでラサ駅に到着。
成都行き列車の出発まで約40分前のタイミングで、ちょうど検札が始まったところ。
これじゃ駅舎の設備をじっくり見るひまもないじゃない
ってことにはならないのよね。
だってラサ駅は本当に切符を買って列車に乗るだけのところ。
場内案内板に表示はあれど、じっさいには食堂も売店もまだ影も形もなし。
とりあえず始められるとこから始めようよ。開通が1日に間に合ったんだからいいじゃん
という見切り発車ぐあいはまさしく中国らしさ爆発。
この近代的だけどがらんとした空間ににぎわいが訪れるのが先か、普通の中国の駅のようにいろんなもの売ってるけどあんま食事とか買い物とかしたくないような具合に汚されるのが先か
ついでに
「ラサ駅サブレ」とか「ラサ駅かまめし」といった名物も登場には今しばしの時間が必要のようで…
気になるテーマだけどそれを確認するのはもうわたしではないみたい。
後進にその道を譲ろうではないか、と。
比較的秩序ある検札を終え、早速成都行き列車(T24)に乗り込んだのでした。
ところで、今回の「青蔵鉄道搭乗記 」。
勝手ながら前後編にわけて書かせていただくんだけど、前編は車窓からの景色を紹介しようかと思っとりまして、で、後編が車内の設備などなど。
だって、成都までは2泊3日計49時間の長帳場。
いわゆる今回開通した「青蔵鉄道」(ラサーゴルムド約1100km)部分、つまり、
標高4000mを超える「難所」を克服して「中華民族史上有数の偉業」を達成した部分
っていえるのは初日のうちに全部に通過しちゃうわけだから、一日目はそれを書き留めるってのが「すぢ」ってものでしょう。どうかご理解をよろしく。
車内に置かれた広報誌などによれば、この青蔵鉄路格拉区段のうち、
写真つき、標高つきで紹介されたのが計16ヶ所。
始発駅、終点駅のほかに西蔵自治区と青海省との境界で今回めでたく鉄路世界最高地点となられた唐古拉山(5072m)や二番目に高い山昆論山(4772m)など。
不凍泉(4611m)やとうと渝渝河(4547m)なんていう聞いたことないポイントもいつくか目白押し(笑)らしい。
さすがだぜ。ゴルムドまでの10数時間、わたしをまったくあきさせないつもりか
と一人うれしくなってたうちが華やかなりし時間。
出発時間を厳守して動き出す列車。
「さすが。やるな。文明を感じるぜ」
車内放送が始まって耳を傾ける。
「この列車はラサを出発しますと終点成都まで那曲、ゴルムド、西寧、蘭州、宝鶏と停車いたします」
だって。
…ご冗談でしょう。
だって4月くらいには鉄路部のお偉方が新聞のインタビューとかに答えてよくいってらっしゃったじゃないっすか。
「青蔵鉄道は観光鉄道でもあるわけだから、利用者の要望に答えるよう、チベット高原を走るのは昼間。さらに途中ある各見所に停車しながら進んでいく」
って。でも車内放送を聞く限りじゃあ単なる特快列車と同じ。
窓ガラスを通して見る風景なんて本物の空気を吸うこともできなけりゃ、さわやかな風を感じることもできない。それに写真だっておろしたての車両のはずなのにすでに手垢まみれのガラスを通したもんじゃ、本物の100分の一の迫力だって写しこめないでしょ。
◎参考写真1:と言い訳も出尽くしたところで車窓からの風景などどうぞ
実際に、
ラサ西駅…通過
羊八井…通過
当雄…通過
那曲…(宣言どおりに)停車
町はずれに立てられたばかりの駅があるだけ。当然、売り子がいるとか、観光案内版があるとか、そういう手の込んだことは何もなし。
一応は車内放送で駅やそ
の周辺の説明はあり。中国語と英語の2種類。
ただし、駅を通過する◎分前、とかいう決まりはないみたいだから、放送からだいぶたって、だいぶ乗客を油断させた上でいきなりその説明ポイントを通過したりする。
それが単に見ても見なくてもいいような駅舎を通過するだけだったら問題ないわけだけど、
「まもなく長江最上流部を通過します」
みたいなことを10分以上前に宣言されるとこちらも集中力を持続するのが大変。
本物の長江最上流部は最上流部と思えないほどに川幅広くて助かったけどね(笑)
で、結局のところ、天気もあまりよくなかったこともあって、車窓からの風景は特筆すべきほどじゃなし。
もちろん、
これがゴルムドから初チベットしてくる乗客たちにはまったく違うものに見えるんだろうけど、悲しいかな、わたしにとっては風向明媚をはるかに超越したチベット最大級の絶景’sを目にしてきたこの一ヵ月半。
「ちょい期待が大きすぎたかな」
と誰を責めることもできず、窓際の席から寝台のベッドに移ろうかと思ってたそのとき、
そんときっ!
ようやく登場していただきました。措那(ツォナ)という名の美しい湖。
わたしの今回のチベ旅にて唯一恵まれてなかったのが湖。
天気に恵まれなかったトルコ石色の湖ヤムドク湖。
時間に恵まれなかった神の湖マナサロワール。
だったんだけど、この「ツォナ」という、青蔵公路から外れた位置にあるため今回の鉄道開通によって初めて一般観光客の目に触れ、当然ながらこれまで日本人旅行者、日本語ガイド本的にも何の存在感もなかったこの湖は、本当にマジで真的大正解。
静かな湖面に逆さに写りこむ雲や雪山
岸辺にて熱心に草を食むヤクや羊の姿
端から端まで列車でも相当時間がかかるほどの大きさ
◎参考写真2:どれもこれもチベットの雄大さを象徴するのにぴったりの光景
これだけで十分満足。
ほんと至福の十数分間。
「うん。これならいける!」
今でこそまだ「名もなき湖」だけど、今後メジャーになるのは確実。デビューしたての「新人歌手」を人より早く目をつけたアイドルおたくのような気分になったわたしでした。
by itoyamamakoto
| 2006-07-05 13:49
| またまた旅に出ました