2006年 06月 28日
サキャはなかなか大物 |
これで最後?チベ日記41
シガツェーサキャ
「お嬢さん、落とし物ですよ」
大正ロマン漂うシルクハットの紳士が言いそうなきざなセリフを言おうかどうか20分ほど迷ったサキャ行きのバスの中。
わたしの右斜め前に座った女性が2人。
偶然にも日本人。
1人はウーパールーパー風で窓側のシート。
もう1人は韓国人風の身なりで通路側のシート。
どうも元々の知り合いがバスの中で偶然再会したらしく、ぺちゃくちゃぺちゃくちゃとくっちゃべり始めてからかれこれ数十分。
日本語とはこんなに他愛のないものだったのか
と思いつつも、すぐ近くから聞こえる自国の言語を抹消して、その他周りのチベット語、中国語だけを厳選して聞けるほど器用なはずもなく、
ちょっといやらしいかな、と思いつつ久しぶりの日本語の洪水に耳を傾けていたわたし。
そんなとき、通路側の女性が何気なく床に捨てたのが、バスに持ち込んでぱくついてた小籠包の袋。で、2度目が飴の袋。
う〜ん、困った。
注意してもいいもんだろうか。
「落とし物ですよ」
なんていって、しらけた眼をされたらこっちが恥ずかしいし、今までずうっと日本人だってこと黙ってふたりの会話を聞いてたこともばれちゃうしなぁ
でも、ポッシェから顔をのぞかすテディーベアーと平気でポイ捨ての態度は、あまりにアンバランスだしなぁ
そんな悩める男一匹30代。
で、またチラッと彼女らの方を見やると、ウーパールーパーの方も「ぷかぁ〜」と紫煙をくゆらせてるじゃあないの。
あちゃぁ〜、こっちもだよ。日本じゃ絶対やんないだろうになあ
中国でも北京や成都など都会の方ではすでに「バス車内は禁煙」とはっきり明示してあり、はっきり違反者は違反者だから、注意されればやめなきゃいけない。
でも田舎の路線になればなるほどそのマナーもいい加減になって、中田舎だと「禁煙」と書いてあっても運転手が率先してるし、大田舎になっちゃうとそんな注意書きすら皆無。すなわち煙の無法状態になっちゃうわけ。
そんな公共心についての教育は中国の最も苦手な分野だろうけど、中国に入ってたった1カ月や2カ月そこらの彼女らがここまで短期間のうちに「中国に染まってしまった」姿を見やり、若者の適応力の早さに驚くとともに
わたしの2年近くはこれでよかったのだろうか
と考えてしまったわたし。
目的地まではまだまだ道半ばどころか5分の1程度。結局はヘッドホンにて耳栓、音楽を聴いて自分の世界に引き籠もってしまったのでした。
で、サキャに到着。
これまでのよしなしごとがほんとどうでもよく思えるほど見応え十分の町だったからやっぱ旅の神に感謝。はっきり言って寺としてはギャンツェ以来の感動ね。
◎参考写真:さあ見てちょうだい。大物チックな雰囲気がもうぷんぷん。匂うような
そうそう。
サキャについて何もまで説明しておりませんでした。
ここはチベット四大宗派「サキャ派」の総本山、その名もズバリ、サキャ・ゴンパ(薩迦寺)の門前町。
しかもモンゴル帝国が世界を席巻した13世紀に元帝国の保護をうけたことから、チベットを政治的に治めただけでなく、この時期を以てチベット仏教はいわゆる「チベット」を飛び出して中国やモンゴルにまで信徒を広げたわけだから、アジア宗教史的にも歴史の転換点となった場所でもあるわけ。
でさらに、川を挟んで北寺と南寺があったサキャ・ゴンパのうち、南寺の方は例の文化活動の際にも奇跡的にその被害を免れ、多数の貴重な文献、仏像、壁画が残されているというまさにお宝の山。
そのサキャ南寺の入場料は45元(約700円)。
安くはないけど、3日間有効というのが気に入った。
それくらい腰を据えてみないと全部は見切れないんじゃないの
という挑戦的なにおいがプンプンする。
もちろんこっちが勝手に思ってるだけだけど。
でも、さすがに四大宗派の総本山というだけあってその規模は壮大。
本堂には10m近い仏像が何体もどかどか座っているし、サキャ派を象徴する灰色と赤色で塗られた周囲の城壁なんて高さ5m以上、正方形の一辺は100mもあるんだって。
そりゃあたまげるよ。
それに昼の3時過ぎという一般参拝者がほとんどいなくなった時間帯だったことも、余計にそのでかさがしみ入る理由だったのかもしれない。
もちろん、あまりにでかすぎることは観光客にとってはもろ刃の剣だってことも実感。
例えばお堂の中。
小さな明かりじゃ天井近くの壁画やなんかはちぃ〜っとも見えまっしぇん!
たぶん色んな芸術品が眠ってる小部屋の数々。
管理が大変なのは分かるけど、鍵かけっぱなしで近くに誰もいなけりゃあきらめるしかないじゃ〜ん!
という泣き言も口に出てくるくらい、ここだったらどん欲に見て回りたい、と思わせるサキャ・ゴンパでありました。
by itoyamamakoto
| 2006-06-28 22:54
| またまた旅に出ました