2006年 02月 28日
蔵族の正月in維族の都 |
#節操なしの旅日記39
Bishkek - 烏魯木斉
「タシデレー・ロサ!」
しょっぱなから久しぶりのチベット語。そう。今日という今日はチベット暦の新年「ロサ」
聖都「ラサ」を始め、カムやアムド、インド(ラダック、シッキム)、ネパールなどなど。チベット族のいるところ、大いに新しい年の訪れを祝っていることでしょうな。
わたしにとっても今回のたびの大きな目的であった「ロサinラサ」
チベットに関わっちゃった者としては、ラサで正月を迎えることは、ベツレヘムでクリスマスを、メッカでイスラム新年を、雲南辺境の中国タウン「東風」で春節を迎えることとおなじ。
これはすべて義務ですよ、義務!
くらいに思ってたのは希望にもえて成都の空港を飛び立った約40日前のこと。
なのに、
ばってん、
志ばかり高くはばたくも、現実は千キロほど足りずにゲームセット。
キルギス航空のツポレフ機はビシュケクを勢いよく飛び立ち、そしてたったの一時間半で息切れ。同じ中国内自治区の省都(区都)でもウイグル自治区の烏魯木斉(ウルムチ)国際空港に。
ここからラサに向かうには飛行機を乗り継いでもまだ2日は必要なわけで、計画は見事に挫折。無念の敗北宣言を行うにいたったわけ。
まあ、行程を逆算すればウズベキ入りした時点からかなり厳しいのは分かってたんで、そこまで特別の感情はなかったりするわけなんだけど…
とにかく新年を迎えるってことはそのたびに心機一転、いらない物だけ捨て去って新しいスタートをきれるってことで、正月の数は西暦、農暦、藏暦と多いに越したことはない。
ちょうどわたしの中の旅行モードも最高ポイントを過ぎかなり下降低迷モード入りしてきてるんで、ちょうどいい区切りになったわけ。だから場所はウルムチでもいいかなってことで(笑)。
そんな、ようするに来るつもり全くなくて来ちゃったウルムチは極寒でござんした。
一面の銀世界プラス、歩道には平均気温が氷点下の証拠、ゴミや排気ガスなどで真っ黒い氷化した雪(歩行者を「すってんころりん」に誘うブービートラップ)がもういたるところ。
さらに空港から市内までのエアポートバスが運行されてないみたいだから、団体のキルギズ人たちがお迎えバスに乗り込むのを尻目に一人とぼとぼ空港外に歩き出すわたし。
どっか近くに路線バスが通っているだろう
と全くの勘を頼りに。
その勘はあたってたんだけど、一番近いバス停が2キロくらい離れているとはつゆ知らず。
でもバス停名は「国際空港」だったから最寄りは間違いなし。ただ、これで最後だと思ってた。肌に痛い風が絶え間なく吹き付ける中を歩くのは。
ビシュケクで危うく宿無しになる危険を冒してまで町の南かなり外れた南旅館に泊まりに行ったのは、「ここだったら中国のガイド本(≒ウルムチの宿情報)があるだろう」という一点に尽きてたわけで、多人間(ドミトリー)のある宿をもうチェック済み。ウルムチ地図もデジカメ内に撮影済み。
で、バスを2本乗り継いで辿り着いた市中心部らしきところ。そっからデジカメのレビューにて市内地図を頼りに約30分かけて「博格達(ボゴタ)賓館」まで極寒のトレッキングagain。
「多人間はもうなくなりました。シングルの最安は130元です」
はい、さようなら。
もちろん石橋をたたいて渡るわたしはもう一つドミ宿をチェック済み。
ただ、そこに行くことは想定してなくて、ついでにこの寒さも、その中を常にすってんころりん警報を発令しながら歩くことも全て考えること自体避けてたわけで、ここにきてようやく地図で新彊賓館の位置を確認。
ここから町の中心をはさんだかなり南にあるわけね。
また、てくてく、
「すっ」×5
「すってん」×3
「すってんころ」×2
くらいを体験。
ウズベキ入り以来生やし続けているヒゲにつららのような物ができあがったくらいにウルムチ駅近くの新彊賓館に到着。
さっきの博格達にくらべてかなり改革開放前チックな建物。これだったら期待も高まる。
「きょうドミは空いてる?」
「多人間はもうなくなりました。シングルの最安は…」
(うへっ、またかよ)
「60元です」
「泊まります。もちろん泊まります」
もう必要以上に歩き続けた感のあるウルムチ。
明日一日くらいは観光しようか、と思ってたんだけど、はっきり言ってもういたくない。
わたしの気持ちを十二分に察知しているかのように、ホテルには航空券売り場も付属されてたりして、部屋で約2時間ぶりに20キロのバックパックを降ろすと、休憩して疲れを取るまでもなくその「誘惑の甘い香り」するオフィスへ直行。
時刻はすでに7時近く。
「成都までなんだけど、『明日』って大丈夫だったりする?」
「うちは24時間営業だからOK。午前の便、午後?」
「一番安いやつだといくらくらい?」
「じゃあ820元。プラス諸費用混みで920元ね。」
「買った」
「あっ、でも両替しなきゃだめだから待ってもらえる?」
と、すでに気分は成都の町中を歩くような感じで銀行探しを始めるわたし。
よく考えりゃ銀行なんてとっくに閉まってる(実は日の遅い新彊は7時まで営業してたりする)し、なんとかカードでおろせる中国銀行のATMまでは辿り着いたんだけど、そこのATMは「賢くないタイプ」。
どういうことかっていうと、
インターナショナルカードを使えるって表示をしているくせに、「あなたの口座に問題があります」と取引を拒否するタイプ。
そんなわけで、かなり焦り始め、財布の中身を再確認するわたし。
「百元札が12、3、…8。五十元は1。二十元1、2。十元123と2、5元」
「…ってことは922、5元か。航空券たしか910元だったよな。明日の朝10時に銀行が開くまで12、5元で生活ってこと?夜飯、朝飯含めて…」
一応明日の午後3時台の便を予約入れてもらったんだけど、さすがに当日に金払いでは許してもらえなさそう。
すでにわたしのプランから晩酌のビールが消え、それどころか、頭の中の電卓をたたくとともに昼間の行軍中唯一の心の拠り所にしていた羊肉串の本数もどんどん減っていき、かなり質素な食卓のイメージができつつある。
「それでもこんな冷凍庫の中に更にまた24時間いなきゃいけないよりはマシ」
というのが結論。
発券の間に事情を話して窓口の小姐に同情されながら、購入しちゃいました。
合計910元(約13500円)の成都行き航空券。
これで3日連続の飛行機移動が確定。そんなバンバン金使っておきながら、空港からのタクシー代(多分500円程度)、宿代(三つ星ボゴタで約2000円)をケチるわたしってやっぱり本末転倒なのかもね。
まあ、捨てる神ありゃ拾う神あり。
航空券売り場とは逆側でホテルと隣接した「托克遜拌面」というウイグル焼きうどん「拌面(ララグマン)」のお店は超絶品。
ラグマンという料理自体はウズベクやキルギズなど中央アジア諸民族に共通に愛される麺料理(名前も同じ)なんだけど、中国内ウイグル族の作るラグマンは桁違いの洗練度。
まず旧ソ連エリアのそれはトマトベースの羊肉、羊臭全開のスープに手延べ麺という特に個性といったものはなし。
対してウイグルのそれはスープにゆでた麺を入れるのではなく、ゆでた麺の上にじゃっかん汁気も含んだトマト中心の野菜と肉の炒めものをテーブルにてぶっかけるから、イタリアのパスタか東アジアのあんかけそば。
それはスープラグマンを食べてたころから思ってたことで、だから、ちゃんとしたのが食いたくてこの店に入ったんだけど、ウイグル・ラグマンいや、これは漢字で「新彊拌面」と言うべきだ。
わたしの知ってるウイグル料理屋(in成都、北京)とはレベルがもう段違いました。
わたしが仕事を辞めた2年ほど前にいきなり流行った「本格讃岐うどん」チェーン店みたいに、お客様のお好みで具が選べます。
ちょっと例えが悪かったかな、と思わないでもなし。
もちろんそんな安っぽいもんじゃないのよ。
例えば具が選べるってのは、
茄子炒肉(7元)
香辣肉丁醤(7元)
豆角炒肉(8元)
豪華過油肉(10元)
みたいなもの。
完全な中華料理とのコラボレーション。超保守的ウイグル系には忸怩たるものあるかもしれないけれど、旨けりゃ許すというのが大多数なんじゃないか、と。
で、わたしが選ばせてもらったのは、留学生人気度95%を上回る「西紅柿鶏蛋(6元)」。美味しさもコストパフォーマンスもこれに勝るものは四川料理以外になし。
◎参考写真:口福は幸福。1日の苦労もうまけりゃ全て忘れられる(麻薬と一緒)
店を出りゃ現世に戻されるのもまた現実。
旅の最後になってこのたび始まって以来の寂しさに見舞われました。財布の中身がね。2、5元(笑)。
宿代(新彊賓館) 60元
航空券(烏魯木斉ー成都) 910元
by itoyamamakoto
| 2006-02-28 14:44
| またまた旅に出ました